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【学校名】

岐阜県立大垣北高等学校

【活動タイトル】

岐阜のオオサンショウウオを守る~国産個体の生息地を取り戻す~

【活動内容】

 岐阜県には、国の特別天然記念物のオオサンショウウオが生息し、オオサンショウウオ属の分布の世界の東限が岐阜県内にあり、学術的に非常に重要な地域である。しかし、県内にオオサンショウウオの専門の研究機関はなく、専門家もいないため、しっかりした調査が行われていない。そうした状況に生徒自らが気付き、本校の自然学部に2021年度に入学・入部した生徒たちが「オオサンショウウオ班」を結成し、まずは、学校の近隣を流れる揖斐川にオオサンショウウオが生息しない理由を突き止めることから活動が始まった。その過程で、環境DNAの手法を用いて、揖斐川と長良川におけるオオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオの分布について明らかにした。2023年8月には、岐阜県下呂市で、岐阜県初、全国では2府7県目にあたるチュウゴクオオサンショウウオとの交雑個体を発見し、2024年6月までに23回の現地調査を実施し、分布状況の詳細、交雑の進行状況、岐阜県や下呂市の関係部署と連携した捕獲調査や捕獲した個体の情報の管理などを主導的に行っている。また、交雑個体が侵入することができない国産のオオサンショウウオのサンクチュアリの創出に向けても、研究を継続している。


1.親しむ活動

 オオサンショウウオが生息する地域の子供たちを対象にした観察会を実施している。地域の子供たちを対象に、普段では触れることのないオオサンショウウオを身近に観察していただくとともに、生徒自身も、普段の現地調査の時よりも、初心に返ってオオサンショウウオと触れ合うことができている。世界最大級の両生類で、生きた化石といわれるオオサンショウウオと、地域の子供たちや人々と交流しながら観察することで、地域の方々や子供たちに加えて、生徒達についても、地域の自然を愛する心が育まれている。

(1)2023年8月8日『歩こう菅田川!見つけようオオサンショウウオ』【資料1】

下呂市金山町菅田地区の小学生親子、地域の方々を対象にしたオオサンショウウオ観察会

(2)2022年11月6日開催、2023年11月5日開催、2024年11月3日開催予定 【資料2】

『オオサンショウウオ調査隊』 岐阜県各務原市主催の木曽川「オオサンショウウオ観察会」にて、参加親子にオオサンショウウオについてのレクチャーを実施し、実際に生きた個体の観察をしていただいた。


2.理解する活動

(1) 揖斐川にオオサンショウウオが生息していない理由の解明【資料3】

 オオサンショウウオは西から岐阜県に分布を広げてきたと言われているが、岐阜県を流れる木曽三川のうち、最も西に位置し、学校の近隣を流れる揖斐川にオオサンショウウオが生息しないことに疑問を抱き、その理由を突き止めることから、本校のオオサンショウウオに関する活動が始まった。その過程で、環境DNAの手法を用いて、揖斐川と長良川におけるオオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオの分布についても明らかにした。揖斐川と長良川の地史を比較することにより、揖斐川はオオサンショウウオが岐阜県付近に分布を広げた年代にはまだ発達していない不安定な河川であって、長良川は今と同様な安定した発達した河川であったことなどを明らかにした。

(2)オオサンショウウオの生息確率が高い河川の環境条件の解明 【資料4】

 長良川水系と揖斐川水系の支流について、オオサンショウウオの生息の有無、各支流の地学的要因のうちオオサンショウウオの生息に影響を与えると思われる、源流から合流点までの河川長・源流の標高・合流点の標高・河床勾配を計測し、二項ロジスティック回帰分析によって、オオサンショウウオの生息確率が高い河川の環境について明らかにした。その結果、合流点の標高が高く、河川長が長い河川がオオサンショウウオの生息確率が高いことを明らかにした。どんな河川をオオサンショウウオが好み、どんな環境を残していけばよいかを明らかにすることができたため、オオサンショウウオの調査や保護活動に大きく貢献すると期待される。

(3)チュウゴクオオサンショウウオとの交雑個体の発見と交雑状況の調査、将来の予測と国産個体のサンクチュアリの創出に向けて 【資料5】

 2023年8月8日に,岐阜県下呂市の菅田川でオオサンショウウオの観察会のための予備調査を行っ

た際、捕獲した3匹のうち2匹が外見上交雑個体と判断でき、その内の1匹からチュウゴクオオサンショウウオの遺伝子が検出されたのが、岐阜県初、全国では9府県目の交雑個体の発見であった。その後、2024年6月までに計23回の現地調査を行い、成体140個体と幼生168個体を捕獲し、マイクロサテライトDNAの5遺伝子座(AJP01・AJP07-1・AJP16・AJP25・AJP26)を解析し、交雑判定を行った。その結果、成体の約40%が交雑個体であることが分かった。さらに下流部よりも上流部のほうが 交雑個体の割合が高いことが分かった。幼生のDNAを調べた結果、全体で85%が交雑個体であるとわかった。どの地点においても幼生の交雑個体の割合は、半数を超えていた。また、成体では岐阜のものとは別の国内外来の遺伝子が検出され、すべて、チュウゴクオオサンショウウオの遺伝子を持つ個体から検出された。しかし、国内外来の遺伝子を持っている幼生には、チュウゴクオオサンショウウオの遺伝子を持っていない個体がいた。さらには、調べた5つの遺伝子座の中にチュウゴクオオサンショウウオの遺伝子をホモで持つ個体が多くみられた。これらのことから、国産個体と交雑個体、または、交雑個体同士で繁殖が進んでいると分かった。菅田川では1mを超える個体が見つかっているが、F1(雑種第1代)は見つかっていないことと合わせると、他地域からF1が菅田川に持ち込まれて、かなりの時間が経過していると考えられる。体各部の計測結果から、交雑個体の方が優位に大きいことが分かっており、国産個体の雄が繁殖に参加できない状況が発生し、幼生の交雑の割合が増加していると考えている。

(4)研究機関との共同研究や協力依頼

 捕獲した個体の情報,採取した組織や抽出したDNAの保管等、生徒が主導的に堅実に実施しているため、その情報やサンプルを利用した共同研究の申し出や協力依頼が国内外から複数舞い込んでいる。以下はその一部である。

・『顎形態と歯の性的二型に関する研究』(アメリカのバックネル大学と京都大学)

・『iPS細胞作製の研究』(熊本大学)

・『国産オオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオとの交雑に関する研究』『体色に関する遺伝子の研究』(広島大学)

・『DNAのメチル化による年齢査定』(麻布大学)

・『オオサンショウウオのRNAseq解析』(産業技術総合研究所)

 また、今年の7月31日~8月2日に広島大学で開催された国際学会『Salamander Meeting 2024』に

おいて、大垣北高校自然科学部オオサンショウウオ班の生徒が共著者となった以下の研究が、広島大学の三浦郁夫教授から発表された.【資料6】

Multiple origins and depths of interspecific hybridization between native Japanese and introduced Chinese species of giant salamanders.


3.守る活動

(1)交雑個体が発見された際のマニュアル作成について 【資料7】

 隣県の三重県では以前から交雑個体が発見されており、さらに、2023年6月に隣県の愛知県瀬戸市でも交雑オオサンショウウオが発見された。それらに隣接するオオサンショウウオの生息地である岐阜県でも、いつ交雑個体が発見されてもおかしくない状況にあると考え、岐阜県の担当部署の文化伝承課との協議に生徒の意見を一部取り入れながら、マニュアルが作成された。

(2)交雑個体の発見

 マニュアル完成の約1か月後の2023年8月8日に、前出の下呂市菅田川での『歩こう菅田川! 見つけようオオサンショウウオ』観察会の際の捕獲調査で、捕獲した3匹のうち2匹が外見的に交雑個体の疑いがあったため、マニュアルに沿って、水族館である世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふに一時保管をお願いし、マイクロサテライトDNAの5遺伝子座(AJP01・AJP07-1・AJP16・AJP25・AJP26)を広島大学に解析を依頼し、交雑判定を行ったところ、1個体からはチュウゴクオオサンショウウオの遺伝子が検出された。

最初に述べたように、岐阜県では長良川水系を除くとオオサンショウウオの調査は、あまりしっかりと行われてきていない。下呂市の菅田川もオオサンショウウオの存在は知られていたが、調査活動や保護活動、個体情報の管理等は行われておらず、詳細な生息状況は分かっていない状態であった。本校の自然科学部オオサンショウウオ班の調査がこの時に実施されていなかったら、下呂市滋賀田川の交雑個体の存在は、まだ明らかにされないまま、交雑が進んでいった可能性が高いと考えられる。

(3)生息状況調査【資料5】

 2024年6月までに計23回の現地調査を行い,成体140個体と幼生168個体を捕獲し、マイクロサテライトDNAの5遺伝子座(AJP01・AJP07-1・AJP16・AJP25・AJP26)を解析し、交雑判定を行った。

その結果、成体の約40%が交雑個体であることが分かった.さらに下流部よりも上流部のほうが交雑の割合が高いことが分かった。幼生のDNAを調べた結果、全体で85%が交雑個体であるとわかった。どの地点においても幼生の交雑個体の割合は、半数を超えていた。また、成体では岐阜のものとは別の国内外来の遺伝子が検出され、すべてチュウゴクオオサンショウウオの遺伝子を持つ個体から検出された。しかし、幼生の国内外来の遺伝子を持っている個体には、チュウゴクオオサンショウウオの遺伝子を持っていない個体もいた。さらには、調べた5つの遺伝子座の中にチュウゴクオオサンショウウオの遺伝子をホモで持つ個体が多くみられた。これらのことから、国産個体と交雑個体、また、交雑個体同士で繁殖が進んでいると分かった。また、菅田川では1mを超える個体が見つかっているが、F1(雑種第1代)は見つかっていない。これらのことから、他地域からF1が菅田川の上流部に持ち込まれて、かなりの時間が経過していると考えられる。体各部の計測結果から、交雑個体の方が優位に大きいことが分かっており、国産個体の雄が繁殖に参加できない状況が発生し、幼生の交雑個体の割合が増加していると考えている。また、ヘビ類やカエル類を嘔吐した交雑個体の発見や交雑個体の水田からの流水の流れ込みでの待ち伏せ行動を観察した。さらには、交雑個体の方が国産個体よりも優位に大きくなることも明らかにした。交雑個体の方が食性が幅広く、様々な餌動物を捕食して、より大きくなり、国産個体との競争に勝っている可能性がある。

(4)捕獲した交雑個体のその後

 捕獲したオオサンショウウオのうち、体色などの外見からほぼ国産種であると推定される個体については、現地で「体各部の測定」「DNA解析に用いる微量組織片の採取」を行い(文化庁に申請済み)、放流している。交雑個体である可能性が高い個体については、DNA解析の結果が出るまでは世界淡水

魚園水族館 アクア・トト ぎふで一時保管をしていただき、国産であると判定が出た個体はもとの場所に放流している。遺伝子解析の結果交雑個体と判定された個体については、命を無駄にしないように各機関に飼育・展示、研究目的で使用をお願いした。現在のところ、単に殺処分し廃棄した個体は1個体もない。ヒトの手で持ちもまれてしまった交雑個体には何の罪もないが、国産個体の存続のためにはどうしても取り除かなければならない状況が続くと考えられる。その命を無駄にしないように、今後も、有効に利用されるようサポートを続けて行きたい。

①飼育・展示

 日本両棲類研究所、世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ、和歌山県立自然博物館、びわこベース、土岐川自然観察館,神戸市外来生物展示センター等

②研究目的など

 東京大学、京都大学、広島大学、熊本大学、産業技術総合研究所、川崎医科大学、麻布大学等

(5)自治体との連携

 今回、交雑個体が発見された岐阜県下呂市では、オオサンショウウオの生息については認識されていたが、生息状況の調査、保全活動については、全く実施されていなかった。その下呂市で、交雑個体を発見してしまったため、本来であれば、交雑個体の生息状況調査の計画や実施、交雑の疑いのある個体の一時保管施設の確保、交雑個体と判明した個体の処遇の決定、国産個体の保全計画の立案など、実際には下呂市の担当であるが、すぐには対応できない状況が続いている。この状況に生徒たちは当初は苛立ちも見せていたが、全く土台のないところでいきなり「交雑個体…」と言われても、すぐに対応できない方がむしろ当たり前ではないかと考えるようになり、「自分たちが何とかしていかなくてはならない。大人たちには任しておけない!」と考えるようになって、下呂市の担当部署と連携をしながら、現地調査、交雑個体の捕獲、DNA解析(広島大学と連携)、交雑個体の譲渡先探し、捕獲個体の情報の管理など、生徒たちが中心となって実施している。今回のような状況は下呂市に限らずに、どこでも起こりうる可能性があり、自治体がすぐには対応できないことも想定される。加えて、オオサンショウウオの研究機関もないような場所では、主体となって交雑問題に取り組むことが非常に困難になると想定される。今回の生徒達の取組は、今後同じような事例が発生した場合の重要なモデルになると考えられる。

(6)生息環境の整備

①濁水の流入

 菅田川の上流部では昨年から圃場整備と河川改修が行われていたが、現地調査で菅田川の調査に訪れると、ひどく濁っていることがあった。すぐに、県の担当部署に連絡をすると、工事による濁水の流入に対する対策が一部不十分であったことと、対策が機能していなかったことの説明を受けた。

 「アユなどの水産資源も豊富な川であるが故に、オオサンショウウオも生息できる」ということを、自治体の担当部署や工事関係者に説明して、今後はこのようなことが起こらないようにとお願いをした。

②ゴミの収集

 下呂市の菅田川やその支流を踏査しながら調査をしていると、多くのゴミがあることに気づく。不法投棄されたものも一部確認できるが、多くは周辺の田畑からの農業資材の廃棄物である。夜間の調査ではゴミを発見しづらく危険も伴うため、昼間の調査では、ゴミを拾いながら調査を行っている。まだ回数は少ないが以下の成果をあげている。

2023年3月10日:総重量5.5kg(農業資材等)【資料8】

2024年5月10日:総重量7.8kg(農業資材,流失した工事資材等)

③生物多様性に配慮した護岸工事 【資料9】

 菅田川で行われた河川改修で、生物多様性に対して配慮のない護岸ブロックが使用されており、隣接する古い護岸には生物多様性に配慮した、オオサンショウウオや魚類が隠れることができるブロックが使用されている。一見、目を疑うような光景に生徒たちが気付き、このことを様々な場面で多くの人に伝えていくように努力している。

(7)国産個体のサンクチュアリの創出 【資料5】

 現地調査では、生息状況調査や捕獲調査と合わせて、既存の堰堤の測定を実施している。下呂市菅田川には、オオサンショウウオの遡上不可能な堰堤があることが判明した。この堰堤はかなり古く、魚道などがなく生物多様性に配慮を欠いた構造である。堰堤の直下までは交雑個体が確認されているが、堰堤の上流部では聞き取り調査による過去の国産個体の生息記録はあるが、昨年8月からの現地調査では、国産個体・交雑個体のいずれも発見されていない。こうした既存の堰堤の上流部で、交雑個体が侵入できない場所を利用して、国産個体のサンクチュアリを創出することを考えている。二項ロジスティック回帰分析による生息確率は高く、目視による餌動物(カワムツ、カワヨシノボリ、サワガニ)の生息状況も良好である。今後、文化庁などと協議を重ねて実現に向けて準備を進めていきたい。


4.広める活動

(1)オオサンショウウオの観察会

①2023年8月8日『歩こう菅田川! 見つけようオオサンショウウオ』【資料1】

下呂市金山町菅田地区の小学生親子、地域の方々を対象にしたオオサンショウウオ観察会

②2022年11月6日開催、2023年11月5日開催、2024年11月3日開催予定【資料2】 

『オオサンショウウオ調査隊』 岐阜県各務原市主催の木曽川「オオサンショウウオ観察会」にて、参加親子にオオサンショウウオについてのレクチャーを実施し、実際に生きた個体の観察をしていただいた。

(2)生息地の地域の人たちとの交流 【資料10】

 調査中に出会った地域の方々にはできるだけ、調査の目的や状況についてお話をするように心がけている。とくに、捕獲個体の体各部の測定を行うときには、近隣の方々に見に来ていただいて、「食物連鎖の頂点に君臨するオオサンショウウオが生息しているということは、この川がいかに豊かであるかということを象徴している」ということをお伝えするとともに、過去の菅田川について、いろいろとお話を伺うようにしている。「オオサンショウウオはアユを食べてしまうので、厄介者」という方が当初は多かったが、「オオサンショウウオがいるということは、アユなどの水産資源も豊かな素晴らしい川である」ことを訴え続けて、理解していただいている。逆に、交雑個体については、大型になり餌についても大量に捕食すると考えられるため、アユなどの水産資源への影響が大きいことを伝えて、調査への協力や情報提供を依頼している。

(3)高校生対象の研究発表会

2021年度

・日本水産学会春季大会高校生発表会優秀賞

『なぜ揖斐川にオオサンショウウオがいないのか~オオサンショウウオの生息条件の解明~』

2022年度

・第12回高校生バイオサミットin鶴岡  山形県教育委員会教育長賞

『なぜ揖斐川にオオサンショウウオがいないのか ~オオサンショウウオの生息条件の解明~』

・第66回岐阜県児童生徒科学作品展中央展最優秀賞

『なぜ揖斐川にオオサンショウウオがいないのか ~オオサンショウウオの生息条件の解明 ~』

・第31回自然科学系部活動 研究発表・交流会最優秀賞

『揖斐川・長良川の地形発達史と地質学的要因の違い~なぜ揖斐川にオオサンショウウオがいないのか~』

・第7回東海地区理科研究発表会最優秀賞

『なぜ揖斐川にオオサンショウウオがいないのか ~オオサンショウウオの生息条件の解明Ⅱ~』

・日本生態学会第70回大会高校生ポスター発表会優秀賞

『オオサンショウウオの生息条件 なぜ揖斐川にオオサンショウウオがいないのか?』

2023年度

・第47回全国高等学校総合文化祭(2023かごしま総文)自然科学部門ポスター発表

『揖斐川・長良川の地形発達史と地質学的要因の違い~なぜ揖斐川にオオサンショウウオがいないのか~』

・第13回高校生バイオサミットin鶴岡  

『オオサンショウウオの生息の有無に影響を与える地学的要因の分析』(山形県教育委員会教育長賞)

『岐阜のオオサンショウウオを守る』(優秀賞)

・第48回 全国高等学校総合文化祭岐阜大会自然科学部門プレ大会優秀賞

『オオサンショウウオが棲みやすい環境とは?~生息地の地学的分析~』

・第8回東海地区理科研究発表会最優秀賞

『オオサンショウウオが棲みやすい環境とは? ~生息地の地学的要因の分析~』

・日本水産学会春季大会高校生発表会優秀賞

『岐阜のオオサンショウウオを守る!~生息地の分析と在来種の保全~』

・SDGsパスポート体験発表会(主催:大垣ユネスコ協会)

陸の豊かさを守る『岐阜のオオサンショウウオを守る!~生息地の分析と在来種の保全~』

2024年度

・第48回全国高等学校総合文化祭(2024ぎふ総文)自然科学部門口頭発表

『オオサンショウウオが棲みやすい環境とは?~生息地の地学的要因の分析~』

・第14回高校生バイオサミットin鶴岡

『岐阜のオオサンショウウオを守る!~国産個体の生息地を取り戻すために!~』(山形県教育委員会教育長賞)

『岐阜県のオオサンショウウオに何が起きているのか ~交雑問題の現状から考える~』 (優秀賞)

(4)一般の学会・シンポジウム等

2023年度

・第18回日本オオサンショウウオの会古座川大会(主催:日本オオサンショウウオの会)

『岐阜県のオオサンショウウオの現状』(口頭発表・ポスター発表)

『オオサンショウウオの棲みやすい環境とは?~生息地の地学的要因の分析~』(口頭発表・ポスター発表)

・はざこシンポジウム2024(主催:和良おこし協議会)【資料11】

トークセッション『どうするオオサンショウウオの保全と交雑問題』にパネラーとして登壇

2024年度

・第25回両生類自然史フォーラム(主催:日本両生類研究会) 

『岐阜のオオサンショウウオを守る!~生息地の分析と在来種の保全~』

(5)国際学会等

2024年度

・Salamander Meeting 2024

Multiple origins and depths of interspecific hybridization between native Japanese and introduced Chinese species of giant salamanders. (共著)

・第8回東アジア農業遺産学会(ERAHS)

『オオサンショウウオの棲みやすい環境とは?~生息地の地学的要因の分析~』

REPORT

【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】

 岐阜では我々の調査によって交雑個体が発見され、その割合が約40%であることが分かっている。

 さらなる現地調査、遺伝子解析や個体群内の遺伝子構成の解明、成体レベルだけではなく幼生での遺伝子構成の解明等に、交雑個体発見から素早く取り掛かることができている。さらに現地調査や分析を重ねることで、精度を上げることが可能である。また、交雑の進行状況をシミュレーションする先行研究のない課題に取り組み、未来の交雑状況を予測するとともに、その予測結果からより効率的な交雑個体の隔離方法について明らかにすることができると考えている。得られた成果から岐阜の国産個体の生息地を守ることは当然のことながら、さらに交雑個体が現在までに発見された地域、将来交雑個体が発見されるかもしれない地域の、交雑問題解決のモデルになると考えている。

 同時に、現地調査では分布状況と河川の形状や堰堤などの人工的な構造物の調査を並行して行っているため、交雑個体をすべて捕獲できない状況でも、既存の堰堤で国産個体と交雑個体とを隔離することを検討している。既存の堰堤を利用することで、低コストで国産個体のサンクチュアリを創出できる可能性を含んでいる。

 交雑個体の影響については、遺伝子汚染による純粋な国産個体の消滅の影響だけがクローズアップされているが、交雑個体が捕食する餌動物を明らかにすることで、生態系への影響が分かり、交雑問題の解決がいかに重要であるかを、強くアピールすることができる。 

 なかなか進まない交雑対策に、現地調査から、遺伝子解析、個体情報の管理、交雑対策の検討から実施に至るまで、私たち高校生が主導的に行うことが、「日本の生物多様性を守らなければならない!」という強いメッセージを、私たちが日本中に広めることができると考えている。

【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】

 岐阜県にはオオサンショウウオ属の世界の最東端の分布域が存在し、学術的に非常に重要な地域であるが、今回の交雑個体発見の危機に際して自治体等大人たちの行動は非常に緩慢で体制の構築に非常に時間がかかっている。オオサンショウウオ専門の研究者や研究機関がない岐阜において、私たちが現状を把握して、対策を考えていかなければならないことにいち早く気付き、行動を開始できている。現地調査では分布状況と河川の形状や堰堤などの人工的な構造物の調査を並行して行っている。交雑個体をすべて捕獲できない場合でも、既存の堰堤で国産個体と交雑個体とを隔離することを検討している。

DNAの抽出、PCR、電気泳動,配列解析等の遺伝子解析の技術を、代々先輩たちから受け継ぎ、それらの技術を駆使し、交雑個体の鑑定や遺伝的特徴等の解析を速やかに実施することができる。解析の結果得られた菅田川の個体群の遺伝子構成から、未来の交雑状況の進行をシミュレーションすることに取り掛かかり、その成果を生かして効率的な交雑個体の隔離が可能となると考えている。

 今までの調査で、ヘビ類やカエル類を嘔吐した交雑個体の発見や交雑個体の水田からの流水の流れ込みでの待ち伏せ行動を観察している。国産個体と交雑個体の食性の違いを従来からある強制嘔吐法に加えて、安定同位体解析を用いて明らかにしたい。交雑個体は国産個体とさらに交雑を続けて、遺伝子汚染のため純粋な国産個体が消滅することがクローズアップされているが、交雑個体が国産個体とは違った餌動物を捕食することが明らかになると、交雑個体が日本の生態系に及ぼす影響を明らかにできる。

地域の方々、研究を支えて下っている研究者の皆様、自治体のご担当の皆様等、これからも多くの方々と関わりながら、オオサンショウウオの交雑問題に取り組み、国産個体の生息地を交雑オオサンショウウオから取り戻すために、尽力していきたい。

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