【学校名】
東京都立国分寺高等学校
【活動タイトル】
天然記念物カラスバトに関する保全生物学的研究および啓蒙的活動
【活動内容】
・なぞも多く、研究者も手を出さない天然記念物で準絶滅危惧種のカラスバトを研究対象にその生態や保全についての研究を行ってきました。
・対象地:現在の所、伊豆大島、八丈島、八丈小島、青ヶ島、三宅島、小笠原諸島です。
・現地の高校生や島民および研究者とともに調査を行い、生徒自身のコミュニケーション能力を養うとともに、その生態や保全に向けての情報を相互に共有してきました。
・生態調査および啓蒙的な主な活動
① 季節を変えてのフィールドでの分布調査や行動調査を行うとともに、生息域の植生や地形などドローンを利用して把握して、カラスバトの好きな環境を明らかにしてきました。
② 繁殖行動や複数の鳴き声の意味の解明、島ごとの行動の違いなどさまざまな側面から検討をしてきました。また、それらを実際に野外で行うだけでなく、都立大島公園や多摩動物園など育個体においても行動を観察し、カラスバトの生態の特性について解明してきました。音声しては、録音したものをRAVEN PROというソフトを使って解析して、どのような音声があるのかを科学的に解析することができました。
③ GPS 装置を国立環境研究所や都立大島公園と共同して装着して、未解明なカラスバトの移動情報や日周行動、季節による行動の変化等の情報を得て、その解析を行い、発表を行うことができました。
④ 八丈小島の巣に研究者が仕掛けたカメラの録画を、生徒とともにまとめ、研究者の方との共著で論文としました。
⑤ 各種学会やその他の高校生の発表機会、研究に関するコンテストなどにも応募し、広く多くの人々に知ってもらえるよう努めてきました。研究成果をポスターにして、都立大島公園に掲示した。本年10月にはリバネス主催の「サイエンスキャッスル2024」でマレーシアクアラルンプールにて発表予定です。
⑥ カラスバトの棲んでいる島においてその存在や希少性を広く知らせるためにポスターを作成し、大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、青ヶ島などの学校や港などへの掲示をお願いし、住民意識の変革にも努めてきました。
⑦ NHK「ダーウィンが来た」での紹介を依頼し、「ダーウィンニュース」「東京いきもの探検隊 」で2回、カラスバトの生態や本校の調査の様子を放映してもらいました。併せてNHK教育- 校講座生物基礎でも、生物多様性、希少種の保護という観点から本種を取り上げていただきました。
⑧ 東京新聞にて2回にわたり本校の活動が取材を受けました。カラスバトの存在や本校の活動を知ってもらう機会となりました(2回目は本年10月に掲載予定)。
⑨ 八丈高校、小笠原高校、青ヶ島小中学校の生徒と合同調査や合同研究会・発表会などを行いました(一部は今秋開催予定。小笠原高校9月25日合同勉強会、12月末青ヶ島小中学校、中谷医工計測財団成果発表会など)。
⑩本校文化祭では毎年本種に関する最新の研究成果を発表し、本校生徒、来校者に本種の存在や生態について知らせている。この展示を見て、本校の生物部に入りたいと入学してくる生徒が少なからずいます。文化祭でほとんどの年で展示部門の最優秀賞をいただいています。
REPORT
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【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】
日本の子供たちの現状は答えがすぐ求める傾向にあり、探求的活動を行わせても問いすら出てきません。ところが、フィールドに出て実際に観察を行うと不思議がいっぱいです。天然記念物に指定されている準絶滅危惧種カラスバトは、その生態研究が進んでいない中で生息地の開発が進み将来が危惧されています。人が近づくと鳴くのをやめ、暗所では体色も黒く見えるので、その存在を認知できません。研究も困難なため、研究者も手を出さない。よってカラスバトの生息する伊豆諸島の住民にも認知されていません。生物の多様性はSDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」でも取り上げられています。
このような環境の中、本校では生物部を中心に先輩から後輩に引き継ぎながら12年間継続して調査研究を進めてきました。調査方法も試行錯誤を続けながら、生徒とともに開発してきました。それらの方法を駆使しながら、季節や個別の鳥の行動観察などを続け、生態の解明が少しずつだが進んできました。研究成果は日本鳥学会や日本生態学会などで生徒がポスターや口頭発表のスライドを作り、生徒自身のプレゼン能力やコミュニケーション能力を向上させるとともに、カラスバトの存在やその 生態を広く知らせることに貢献できました。また、新聞や雑誌、テレビ番組などで取り上げられることも多くの人に上記のメッセージを届けることにつながることも実感できました。 まだまだ未解明なこの鳥の生態の解明を進めるとともに、広くその研究成果を様々な方法を使って知らせて行くことの重要性を認識しています。さらに、カラスバトの生息する伊豆諸島在住の高校生や一般市民と一部調査を一緒におこなったり、研究発表を行うことなどが始められました。今後さらにいろいろな島在住者とできるような環境を構築していきたいと思います。
【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】
希少で貴重な天然記念物の鳥カラスバトの生態の解明は、この種の用心深さと個体数の少なさ故、進んでいません。それを12年にわたり継続的に行っていることや研究者、地元の高校生や市民と共に行おうとしています。カラスバトの保護を謳ったポスターを生徒が作成し、学校や港に掲示しています。カラスバトの存在と保護の必要性を謳っています。また、研究者や企業等の先駆的な方法を取り入れながら成果を上げられるようになってきました。 GPS装置を装着しての位置情報や日周行動の情報などから、渡りやどの時間帯に主に活動しているのかなどが明らかになってきました。
野外や飼育個体の観察から、どのような場面でどのような音声を発しているかを解明し、音声は現在わかっているところ、6種類に分類され、それぞれがどのような場面で発生されているのかが明らかになってきました。今後姿が見えなくても、森の陰でカラスバトがどのような行動をしているのかを明らかにすることができると思います。今回カラスバトの交尾に関する一連の行動と音声を初めて記録することができました。
これらの情報は、学会でのポスターやさまざまなイベントでのポスター・口頭で発表しています。また、論文などでも発表していますし、新聞や雑誌、テレビ番組でも研究成果や活動の様子などを発表しています。学会関係の論文は生徒の調査項目や意見を入れながら主に顧問が執筆してますが、生徒は日本学生科学賞などに応募しています。 これらの諸活動を通じて、少しでも多くの人にカラスバトの存在を知ってもらい、将来に向けて保護 していく機運が高まればよいなと考えて、今後とも努力していきます。