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【学校名】

岐阜県立岐阜高等学校

【活動タイトル】

守れ!ふるさとのヤマトサンショウウオ 2024

【活動内容】

 岐阜市生息地におけるヤマトサンショウウオの保全活動を18年間行ってきた。

 主な活動は、以下①~③である。

① 繁殖期に生息地で産卵された卵嚢を全て回収し、孵化した幼生を飼育、変態後に放流する。

② 繁殖期に水場で成体を一時的に捕獲し、マイクロチップによる標識と各部位の計測、遺伝子調査を行い、生息地個体群をモニタリングする。

③ 繁殖が行われる水場を清掃し、アメリカザリガニなどの捕食者を駆除し、産卵床として束ねた稲わらを設置する。


 昨年以降、新たに取り組んだこととは以下④~⑥である。

④ 2024年には、生息地で保護した卵嚢の半分を、水場に設置した金網(網のサイズは幼生より小さい)の中に戻した。

⑤ 保護活動に一定の成果が見られている現在の生息地環境を把握する目的で、生物相、水質、気象等についてデータを蓄積した。

⑥ 生息域外飼育場の一つである岐阜大学人工池の産卵実績を上げるため、2023年1月には池の水を抜き、全ての泥を浚った。その後、防水シートに亀裂が見つかり、人工池の水位が保てなくなったことを機に、2024年1月にはシートを全て外し、繁殖のための水場として元の人工池内にトロ舟を設置した。


また、以下⑦は、計画である。

⑦ 生息域外飼育場の一つである岐阜市市有地には3つの池があるが、ヤマトサンショウウオの他にもアカハライモリやモリアオガエルなどが生息している。それぞれがすみわけできるよう、池とその周辺を整備する予定である。

REPORT

【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】

上記活動内容①~⑦に従って記載する。

① 野生下での死亡率が高い幼生を屋内で飼育し、上陸直前の個体を放流することで、絶滅の危機に瀕していた個体群の成長を促すことができた。ただし、今年は保護卵嚢数が大きく減少し、昨年から未発生卵が多くなっている。長期的な保護活動の結果によるものか、気候変動等による影響か、その他の原因かについては、継続調査で明らかにしていきたい。

② 成体の計測や標識、遺伝子解析を通して、大まかな齢構成や各個体の成長、個体群のハプロタイプ頻度をモニタリングし、この個体群の動態を把握している。

③ 生息地の水場環境を整備し、産卵環境を整えることで、繁殖実績を上げてきた。

④ 生態系への介入の程度を下げることを目的とし、全卵嚢の保護をやめ、各卵嚢対の半分を現地で孵化させることにした。孵化した幼生が成体となる2~3年後に効果を評価したい。

⑤ 生息地は弱酸性土壌に支えられた生態系であり、成体の餌となる地表性昆虫が豊富であること、他県で報告されているような大型哺乳類による被害は今のところ見られないこと、幼生の住みかとなる水場の溶存酸素濃度は環境省が定める環境基準Aに近い数値であることがわかった。また、過去30年間の岐阜市気象データから、気温上昇が進み、降水パターンの変化がみられたことから、今後、気候変動による生息地への攪乱が心配されるため、リスク管理として生息域外保全にも力を注ぎたい。

⑥ 岐阜大学人工池では、4年ぶりに産卵が確認され、5年ぶりに受精卵が孵化した。環境改善が功を奏したと考えられる。

⑦ 岐阜市市有地は様々な野生生物が生息する場所である。すみわけにより、多くの生物が共存できる環境づくりを目指したい。

【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】

 昨年から、生息域外飼育場の一つである岐阜大学人工池の産卵実績を上げることを目指してきた。

 昨年は、人工池の水を抜き、大規模に清掃を行ったところ、3月に多くの卵嚢を確認することができた。この卵嚢の数だけ成熟した雌個体が定着していることもわかったが、残念ながら卵は一つも発生することはなかった。なお、清掃時、成体が生息する陸部分には、照度を確保できるよう一部の木を伐採し、また、すみかを増やすために落葉樹の落ち葉や腐植を置いた。

 その後、防水シートに亀裂が見つかり、水位を保てなくなったことをきっかけに、今年は人工池があった場所にトロ舟を設置し、限られた空間に水を入れることで成体を集め、繁殖を促すようにした。防水シートをはがした裏側から成体を数匹発見したため、この場所に成体がとどまっていることも実際に確認できた。捕食者対策としてトロ舟の上を木の板で覆い、水は週1回交換した。昨年同様に発生しない卵は多かったが、卵嚢4対分の受精卵が発生し、孵化・上陸させることができた。5年ぶりの幼生誕生に関係者一同喜んだ。なお、トロ舟の設置は、専門家による助言と、岐阜県世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふの域外飼育を参考に行った。また、昨年の大規模清掃に引き続き、今年も岐阜市環境保全課の職員の協力を得て実施した。

 学校の所在地と生息地、および岐阜大学はそれぞれ約7km離れており、生息地と岐阜大学間も同様に離れている。特に繁殖期において、卵嚢・幼生の飼育や成体の計測等を校内で行うとともに、自転車等を使って各場所を行き来して活動を行った部員は、地元の絶滅危惧種保護の意味を理解し、各場所の環境改善によく取り組んでくれたと思っている。

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