学校名:愛知県立佐屋高等学校
【活動タイトル】
愛知県愛西市内水路に生きるカメ類
対象生物:
は虫類
【活動開始年】
2020年
【活動に関わっている学年および生徒の数(年間)】
1年から3年 約15人
【活動概要】
本校周辺は木曽三川の水の恩恵を受けた豊かな水田地帯です。地域には数多くの用水路があり多種多様な生物が生活を営んでいます。生物類の中でもカメ類は食物連鎖の関係で見ると上位に入ると考えられます。カメ類の生息実態を明らかにすることは、用水路全体の生物相を把握する上でも重要と考え、研究に取り組むことにしました。
この研究では、日本在来のカメ、イシガメやスッポンの生態を明らかにするだけでなく、外来種、アカミミガメの生息実態も把握したいと考えています。アカミミガメは、生態系に大きな影響を与えるだけではなく、農作物にも被害をもたらしています。用水路で見られるカメ類の大半がアカミミガメであるため、アカミミガメの実態を知る上でも本研究は非常に重要であると考えています。
【活動による成果・効果または活動によって今後期待できること】
個体ごとの計測により、特に年齢、雌雄を明らかにすることが重要であると考えている。カメ類の雌雄の決定は、卵の時、その土地の気温が大きく影響している。現在、採捕したカメ類の多くは雌である。種ごとにこれらの特徴を調べることは、生物相を調べるだけではなく、環境全体を知る上でも非常に重要であると考えている。
採捕したカメ類の糞の観察も非常に重要であると考えている。摂取物の多くが消化されているため、肉眼での観察には限りがあるが、動物系のものでは甲殻類はよく残っている。また時々、植物系でも未消化物のものもあり、特に水路の環境が限定されるコンクリート三面張りの用水路で何を食べているのか、明らかにできることも期待している。
アカミミガメの採捕後の処分については、命を奪うため、倫理的にも苦慮する場面が多い。採捕する数も多く、毎回の冷凍処分にも限界があるため、実験池で一時的に飼育し、観察・調査も続けている。アカミミガメの行動様式を少しでも知り、繁殖をさせないための手段を知ることで、無駄の命の誕生を抑えることができないかと考えている。
今回の調査では、アカミミガメが優占種になっているとはいえ、クサガメやスッポンもしっかり生息していることが分かった。わずかではあるがイシガメも採捕をした。今後、国内在来種を保護するための環境保全にも取り組んでいきたい。
【アピールポイント(活動において特に工夫したこと、注意・注目したことなど)】
カメ類の採捕は、この大会では4月から7月までのデータで発表しているが、現在も行っている。年間を通して採捕を行うことで、用水路におけるカメ類の季節変動を明らかにしたいと考えている。採捕したカメ類は、個体別に計測・記録を取っている。外来種以外はマーキングし放流をしている。再捕獲したときに、その個体ごとの行動範囲を明らかにできると見込んでいる。また、一部の個体は飼育し、行動様式を明らかにするための実験も行っている。
今回の調査で、夏に入る頃、一時的にアカミミガメの減少、クサガメの増加が明らかになった。年間を通して、アカミミガメが水路を占有していないことが分かってきた。
【今後の課題、これからやってみたいことなど】
コンクリート水路に囲まれた水路の中でカメ類はどのように生きるのか、バイオロギング的手法で明らかにできないか現在検討している。そのために、小型カメラを幾つか用意し、装着して実験も行っている。この研究は、ウミガメでバイオロギングの研究をしている名城大学農学部生物環境科学科の助教からも指導を受けながら行っている。助教からは陸水のカメを用いたバイオロギングの研究は例がほとんどないため、期待もされている。
コンクリート水路に生息するカメ類が、繁殖行動をどのように行うのかも明らかにしたい。現在、私たちが調査をしている水路はほとんどがコンクリートに覆われ、地上との落差も大きいため、どこで繁殖を成し遂げるのか、実態は全く未知といえる。
アカミミガメの駆除、またその後の利用法も更に研究を進めたい。アカミミガメの駆除は現在、冷凍しその後は焼却・埋土または堆肥化などが行われている。無駄のない命の利用法を、生徒たちと考えていきたい。