「Re:Save The Okinawan Wild Orchids」

〇活動期間:2025年4月~
〇参加人数・部活名等
グリーンライフ科グリーンバイオ部生徒4名 指導教員2名
〇活動場所
本校演習林、本校農場、石垣市役所、飲食店、教育施設

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活動内容

1. 活動の背景と目的(テーマ設定理由)
 沖縄県八重山諸島は、豊かな自然環境が生み出す独自の生態系を有しており、多くの固有種や絶滅危惧種が存在する生物多様性の宝庫です。しかし、近年の開発や環境変化、ならびに乱獲採取などにより、多くの野生生物が絶滅の危機に瀕しています。
 私たち八重山農林高等学校グリーンライフ科は、校内のガジュマルの樹に着生していた絶滅危惧ⅠA類の「コウトウヒスイラン」との出会いをきっかけに、地域に眠る野生ランの価値を再認識しました。八重山諸島には素晴らしい野生ランが自生しているにもかかわらず、その多くが人知れず姿を消しつつあるのが現状です。「地元の豊かな自然と稀少な野生ランを未来へ守り継ぎたい」という強い想いから、何十年前に本校で行われていた野生ランの保全活動を再び、新たに始動すべく「Re:Save」として再スタートさせました。 本活動のビジョンは、本校での野生ラン株の充実・適切な栽培および増殖技術の確立、そして地域社会への普及・発信を通じて、地域の自然と人間が共生する「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を実現することです。今年度は「野生ランの認知拡大」および「保全活動の持続的な基盤づくり」を具体的ゴールに掲げて取り組みを進めました。

2. 具体的な活動内容
(1)自生・栽培環境の比較調査と適切な保全管理
 校内で管理していたコウトウヒスイランの大株について、株の過密化による病害虫リスクや生育不良を防ぐ目的で株分けを行い、40株の個別管理株を確保しました。さらに、最適な生育環境を明示するため、校内温室と本校が所有するオモト岳周辺の「演習林」における生育比較実験を実施しました。演習林の樹木に着生させた株は、温室での栽培株と比較して根の活着・伸長が極めて良好であり、葉緑素計による測定でも演習林平均65.1、温室平均38.7と大きな差が見られました。このデータから、自然環境に近い環境での管理の有効性を実証しました。
(2) 演習林における生態系調査と自然保全拠点の発見
 演習林の調査を継続的に進めた結果、環境省レッドリスト等に掲載されている「カゴメラン」の100株以上の広大な群生をはじめ、イモネヤガラやユウコクランなど、希少な野生ランの自然自生地であることを確認しました。この発見により、本校演習林が単なる実習の場にとどまらず、八重山の野生ラン保全における「生物多様性の重要拠点」であることが明らかになりました。
(3) 地域住民・愛好家との連携の広がり
 活動の認知向上を目指して開催した校内即売会をきっかけに、地域の愛好家の方から「ナリヤラン」500株をはじめ、カクチョウランなど多数の希少な野生ランを教材としてご提供いただきました。開花したナリヤランの校内ディスプレイ展示が地元報道機関に取り上げられると、その反響から「自分たちも栽培を頑張るから、若い世代も頑張ってほしい」と応援の輪が広がり、更なる株の提供や情報交換へと繋がりました。これにより、ゼロからスタートした私たちの圃場は、多種多様な野生ランが息づく地域の保全拠点へと成長しました。
(4) 次世代・地域への普及啓発活動
 野生ランの保護には、地域全体での関心と誇りを育むことが不可欠です。私たちは石垣市役所や由緒ある桃林寺などの地域施設において野生ランの着生PR活動を展開したほか、川平小中学校での出前授業を実施しました。小中学生に対して野生ランの現状を伝えるとともに、着生体験や苗の譲渡を行い、次世代を担う子どもたちへ保全のバトンを渡す取り組みを行いました。また、活動内容の報告として「沖縄国際洋蘭博覧会2026」「国立自然史博物館誘致における八重山シンポジウム」において、私たちの活動を共有させて頂き、広く野生ラン保全について知って頂きました。
(5) 行政(環境省)との連携と自然共生サイトへの挑戦
 持続可能な保全体制を構築するため、環境省石垣自然保護官事務所の方々から生物多様性による講演会、意見交換会や演習林の現地視察を実施しました。私たちの活動内容に「高校生として素晴らしい活動」と評価を頂き、今後も連携協力を頂きながら、活動を進めていくことを約束していただきました。今後は2030年までに生物多様性の損失を食い止め回復させる国際目標「ネイチャーポジティブ」の達成に向けて、本校演習林を民間の取り組み等によって生物多様性が保全されている区域「自然共生サイト」として認定することを目指し、専門的なアドバイスを受けながら準備を進めています。

PR資料

活動紹介動画


成果・工夫した点

(1) 科学的アプローチによる生育環境の可視化とデータ化
 単に「自然を大切にする」という目標に留まらず、科学的な根拠に基づいた保全活動を意識した点が最大の工夫です。校内で管理していた絶滅危惧ⅠA類「コウトウヒスイラン」の大株について、病害虫の発生や生理障害を防ぐための適切な株分け技術を確立し、40株の増殖管理を行いました。さらに、人工的な管理環境(校内温室)と本来の自然環境(オモト岳周辺の本校演習林)における生育比較実験を実施しました。葉緑素計(SPAD値)を用いた葉の生理状態の数値化や、根の活着・伸長率の継続的なトラッキングを行い、演習林での栽培株がSPAD値平均65.1(温室は平均38.7)と顕著な生育差を示すことを実証しました。このデータを可視化したことで、今後の野生ランの自生域外保全および自生域内保全の架け橋となる貴重な基礎資料を整備することができました。

(2) 学校演習林の新たな価値発見と「自然共生サイト」を目指した行政連携
 本校が所有する演習林の生態系調査を定期的かつ入念に実施した結果、環境省レッドリスト等に指定されている「カゴメラン」の100株を超える大規模な自生群落をはじめ、イモネヤガラやユウコクランといった多様な野生ランの自生地であることを発見しました。この発見を機に、演習林を単なる実習場としてではなく「八重山の生物多様性を守る重要拠点」と再定義しました。さらに工夫した点として、高校生だけの活動にとどめず、環境省石垣自然保護官事務所へ直接アプローチを行い、意見交換会や演習林の現地視察を実現させたことです。2030年までのネイチャーポジティブ達成に向け、民間の取り組み等で生物多様性が保全されている地域を認証する「自然共生サイト」の認定取得を目指し、専門的な指導を受けながら認定に向けた申請の準備を進めています。

(3) 地域コミュニティと連携した「巻き込み型」普及啓発モデルの構築野生生物の保護は、専門家や一部の愛好家だけでなく、地域住民全体の理解と協力が不可欠です。私たちは、市民や次世代への啓発について工夫を凝らして展開しました。
○地域施設での着生PR:石垣市役所や歴史的建造物である桃林寺などの協力のもと、敷地内の樹木に野生ラン着生を実施し、日常の中で市民が野生ランの魅力に触れられる機会をつくりました。
○小中学生への出前授業:川平小中学校等において、地元の野生ランが置かれている現状を解説する講義だけでなく、実際にランの苗を樹木に着生させる体験型のワークショップを開催しました。子どもたち自らの手で苗を託すことで、地域への愛着と保全意識を育む教育的工夫を取り入れました。

(4) メディアと愛好家ネットワークを活用した資源循環の創出
地域交流の場である校内即売会を起点に、地元の野生ラン愛好家との信頼関係を構築しました。愛好家の方々から譲り受けたナリヤラン500株などの貴重な資源を開花時期に合わせて校内にディスプレイ展示し、積極的に地元新聞社やテレビ局等の報道機関へ情報発信を行いました。この報道が反響を呼び、「若い世代の情熱を応援したい」「自分たちが持っている株も教材として活かしてほしい」という新たな愛好家からの申し出が相次ぐ「保全の連鎖」を生み出しました。ゼロからスタートしたプロジェクトでありながら、地域に眠る野生ランの株と栽培技術を集積・継承するプラットフォームを作り上げた点は、私たちの活動の集大成です。

2. 得られた成果 
(1) 定量的成果
○個体数の拡大と多様性の確保:株分けによりコウトウヒスイラン40株の個体群を安全に管理・確保しました。また、愛好家からの寄贈によりナリヤラン500株をはじめ、カクチョウラン、ナゴランなど多種多様な八重山の野生ランを圃場へ迎え入れ、教材および遺伝資源として保護・維持する体制が整いました。
○自生群落の把握:演習林内において、100株以上のカゴメラン群生のほか、希少種複数種の自生状況を確認・記録しました。

(2) 定性的・社会的成果
○専門性と保全意識の向上:生育環境データの収集や分析、無菌播種をはじめとする増殖技術への挑戦を通じて、科学的探究心と環境保全に対する当事者意識が高まりました。
○地域社会への意識改革と次世代教育:出前授業や市役所・お寺、保育園、飲食店での展示、メディア露出や各関係機関におけるイベントでの発表等を通じて、八重山諸島の野生ランが直面する危機と保全の必要性を広く周知しました。「地域固有の自然を地域全体で守る」というネイチャーポジティブの意識を、小中学生から高齢層の愛好家まで幅広く浸透させることができました。
○行政との関係構築:環境省との定期的な連携ルートを確立し、自然共生サイト認定を目標にさらなる活動発展を目指します。


🏫学校情報

沖縄県立八重山農林高等学校
〒907-0022 
沖縄県石垣市字大川 477-1