未来へつなぐ襷 
~地域に生きる仲間として生態系を守る~

〇活動期間:1991年~
〇参加人数・部活名等
自然科学部 生徒12名、教員1名
〇活動場所
学校周辺、北山湿地、山綱川、鉢地川他学区内

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活動内容

 平成3年から、生徒が自分たちの手で掘った池で約35年間カワバタモロコを守り続けてきました。保護池は、多くの野生生物も訪れるビオトープになりました。自然下のビオトープはさまざまな影響を受けるため、2023年からは絶滅を防ぐ目的で屋内水槽での保護・繁殖活動も行っています。受け継いだ情報に加え、自分たちなりに方法を考え、毎年繁殖に成功しています。繁殖期に入る前から天候、水温、産卵の有無を記録し、過去の記録を参考に繁殖時期の予想を立て準備しています。産卵が始まると卵を水槽から別容器に移し、ふ化後は大切に育て1年育てた稚魚は保護池へ戻しています。
 池ではウシモツゴ、ミナミメダカ、ホトケドジョウも保護しており、個体数維持のため、同じように水槽での保護・繁殖活動を試みています。ホトケドジョウとウシモツゴは、繁殖できない年もあるため日々観察し、試行錯誤を続けています。
 こうした環境の変化に弱いカワバタモロコたちの保護活動を中心としつつ、その生息地でもある豊かな自然環境を守る活動を広めるため、校内に活動紹介や生態系保全の啓発、特定外来生物についての注意を促す掲示をしています。また、今までの保護活動の内容や成果を文化祭で発表し、自然環境を守ることの大切さを理解してもらうようにしています。
 実際に地域の生態系を守る活動も行います。学区内にある湿地群「北山湿地」の保全活動に参加し、市の環境保全課と保全の会の方々から活動の中でさまざまなことを学んでいます。休耕田から貴重な湿地群へと整備されたここでの活動はとても貴重な時間です。背の低い湿地の植物に光が当たるように草を刈り、刈り取った草は湿地の栄養にならないように山に集めます。また、作業だけでなく、今年は食虫植物を専門とする大学の先生のお話を聞く機会がありました。私たちの保護池の周囲も長く休耕田のまま放置されています。同じように豊かな生態系を作り出している可能性もあるので、今後そういう視点をもって活動していきたいと思います。
 また、河川調査を行い、地域の環境に変化がないか見守る活動をしています。水質や生物の調査を行い、過去に先輩が残してくれた記録と比較して急な変化がないか確認します。今年の夏には、最近は記録がなかったナマズを確認できました。水質に大きな変化は見られませんが、ゴミが少し増えたので調査時にはゴミの回収も行います。散歩中の地域の方もゴミは気になっているようで声をかけてくれます。個人で川へ入りゴミを回収するということはあまりないので、私たちのような活動が必要です。今後さらにゴミが増えるようであれば、学校行事の学区清掃で回収することも考えています。鉢地川の調査では、数年前からオオフサモの繁殖が確認されています。河川の中に広範囲に広がっていて駆除するのが難しいため私たちは手をつけられていない状況ですが、何らかの方法で地域に情報を広めていく必要があります。また、学区にはオオキンケイギクが増殖している場所がいくつかあります。個人の土地に植えている場合もあるようですが、多くは道路脇などに広がっています。保護池の近くの土手にも繁殖しています。花が咲き始めたころに根元から抜き取りしっかりと対策をした駆除をしていますが、すべて取りきることは難しいため数年かかりそうです。特定外来生物について知っていれば駆除の輪が広がるかもしれないので、校内では特にオオキンケイギクが特定外来生物であることを掲示物で知らせています。
 長く地域の自然に目を向けた活動を継続してきたため、今年の夏、一般の方から小川で捕まえた魚がカワバタモロコかもしれない、何か地域に貢献できればという連絡が入りました。送っていただいた写真を確認したところ、カワバタモロコだと思われました。地域の大学の先生に相談をしたところ、やはりカワバタモロコであるとお返事をいただきました。生息地保全に向けてのアドバイスでは、以前、他県でカワバタモロコを再発見したときに淡水魚愛好家の方が捕獲してしまい、いなくなったことがあるので注意を、というお話をうかがいました。保全は慎重に行わなければならないと感じました。そこで、学区内でカワバタモロコを飼育し自然の保全活動を行っている方と市の環境保全課に連絡をとりました。それぞれその場所に野生下で生息しているという情報は初めて聞くということでした。保全課では非公開で市内の生息場所を把握しています。私たちと情報をくださった方で生息場所を調査し環境保全課に情報提供すれば、今後のことを話し合っていただけるということでした。9月に入り現地で連絡をくださった方からお話を伺い、生息場所の情報を集めました。水質の調査などを行い、実際に小川に入って私たちも網で4~5cmに育ったカワバタモロコを2匹捕まえました。他にも、15㎝ほどになり、婚姻色の出ているカワムツやミナミメダカ、モクズガニなどたくさんの生物に出会えました。
 それらの情報を環境保全課に報告しました。今後の保全の方針が決まり、何か私たちにできることがあれば協力していきます。


成果・工夫した点

 カワバタモロコの屋内繁殖で利用する産卵基質は、確認が容易にできる市販のメダカの産卵床と一度にたくさんの卵が取れるビニールひもで手作りした水草を用いています。繁殖についてはまだわかっていないこともあるようなので、私たちもできる限り記録を取っています。いくつかの研究機関の資料を見ると水温や潮の満ち引き、日長時間、積算日照時間などが関係しているのではないかとされているため、私たちにできる記録を残してきました。今年度は、過去2年分の記録と比較することができ、繁殖の始まる条件についてわかってきたことがあります。産卵の開始は3年間とも水温が20℃を超えたあたりでした。終わりは、年によって違いが出ました。日長時間が14時間を超えるのは、ちょうど水温が20℃を超える頃と同じころでしたが、日長時間が短くなっても産卵はしているため終わりとは関係がなさそうでした。
 今後の保護活動に生かせるよう記録を残していき、自然環境下の保護池の繁殖にも生かしていきたいと考えています。今年の夏の調査捕獲では、個体数、個体のサイズから判断し、池でも順調に繁殖していることが確認できました。今は順調に繁殖していますが、いつどのようなことが起きるかはわかりません。次の繁殖期は、池の水温の記録も取り、自然環境下と屋内で同じ条件の日長時間と、水温のどちらの条件で産卵が起きるのかを調べる予定です。屋内水槽の産卵から考え、池に産卵床を入れる場所や入れ方を工夫すれば確認が可能です。そして、屋内でのデータを基に産卵開始時期を予測して確認していけば、池での繁殖が順調かどうかもわかるようになるはずです。
 カワバタモロコは産卵期間が長いため、屋内水槽では卵を産卵日ごとに分けます。餌を食べ始めたら同じ時期にふ化した仔魚を一緒にし、個体差により餌を食べられない仔魚が出ないようにしています。ある程度大きくなるまでは複数の容器で育てますが、設備の関係でふ化した月ごとに大きさを見て一緒にしています。また、仔魚の初期には、微生物がいる池の水を餌として与えます。市販の餌は栄養値が高いと思いますが、仔魚がうまく食べられず食べ残したものが腐って水が汚れることを防げます。
 自然環境を保全し、野生生物を保護するためには、実情や活動内容を多くの人々に知らせ理解してもらい、共に考え行動してもらうことが必要です。どんな方法なら私たちにもできるのか、自然科学部として何ができるのかを常に考えてきました。今年は新たな方法として池の浚渫作業で出る泥から肥料を作り頒布することを計画しています。処理に困っていた不要物を自然由来の肥料とし、広報活動に利用していきます。校内の植物に肥料として加え効果が見られたので、今後校内で活動趣旨を添えて希望する人に頒布します。
 自然環境下でのカワバタモロコ発見の連絡があったときには、外部の方にたくさん助けていただきました。市の環境保全課だけでなく、地域の大学の先生にアドバイスをいただき、カワバタモロコの飼育をしている地域の方にも市内の現状をうかがえました。連絡をとっていろいろ確認したのちに行ったカワバタモロコの生息地調査は、今後の保全のために私たちが環境保全課に報告するという使命感をもって行えました。生物の調査では、連絡をくださった方が最後まで一緒に調査に参加し、魚の種類を一緒に確認していただけました。地域の方と協力して活動できたことは、今後に繋がるとても有意義な時間でした。野生下の川にカワバタモロコが生息している情報は保全課にはないそうなので、今後が楽しみです。
 自然科学部は、市の方針を受けて今年度で部員の募集が停止されました。私たちにはどうすることもできません。しかし、先輩の思いを受け継ぎ活動し、大切に保全してきた池や保護してきた魚たちがいます。魚たちのために、自然環境を保全するためにという長く受け継いできた思いを、私たちの手で東海中学校の次の活動母体に引き継がなければなりません。2年後、今まで活動してきた私たち自然科学部の思いを引き継ぐ新しい形をどうしていけばよいのか、私たちも考えていきます。


🏫学校情報

岡崎市立東海中学校
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