多様かつ安定した環境を構築する生徒主体のビオトープ活動

〇活動期間:2023年5月~
〇参加人数・部活名等
ビオトープ管理委員会 生徒32名、教員1名
〇活動場所
学校内中庭ビオトープ空間

🌐ビオトープ情報

活動内容

(ⅰ)生徒主体で制作・管理をしている中庭ビオトープ「生徒たちが自発的に行う活動」
 令和5年5月上旬、1年生の理科の授業で「いろいろな生物とその共通点」という単元を学習する際、生徒たちから「中庭をビオトープ空間として考え、どの学年の理科の授業にも他の教科の授業にもつながる空間をつくっていくのはどうか?」という案が出た。職員会議で議論を重ね、学校として許可を得て、全校生徒で中庭の環境について考える機会を設けている。発案した学級を中心に、校内ビオトープ案コンテストを実施し、中庭の環境づくり案を募集した。ビオトープ管理委員会の大きな目標は「生物多様性を中庭のビオトープで実感できるようにする」とし、具体的な目標として
「①福島市の鳥『シジュウカラ』が中庭にやってくる」
「②トンボがビオトープ内の池に産卵し、かつヤゴの羽化を観察する」
「③生物種が自然発生で5種類以上観察できるようになる」
と設定し、令和7年度まで活動してきた。令和8年度からは、令和7年度の目標をほぼ達成しきったと判断し、大きな目標を達成できるように新しい以下の目標を設定した。
「①福島市の鳥『シジュウカラ』が中庭にやってきて、子育て・巣立ちを観察する」
「②トンボがビオトープの池に多数生息し、ヤゴの羽化を継続的に観察する」
「③生物種が自然発生で5種類以上通年で観察できるようになる」
「⓪中庭ビオトープの中に多様かつ安定した環境を構築する」
 昨年と大きく変わった所は、通年・継続的に生物を観察できるようにするという所だ。また、目標①〜③までは、令和7年度と似ているが、令和8年度からは全ての基礎となる「多様かつ安定した環境を構築する」という目標が追加された。ビオトープ活動の維持・管理のため、ビオトープ管理委員会という有志団体も組織している。令和5年6月から始まった中庭の環境づくりでは、生物たちにとっての生息場所、休憩場所、繁殖場所となる水場を作るため、何日もかけて土を掘り、福島県型の池を作ったり、草原の区域を作るために校地内からススキやチガヤを移植した。草原の区域づくりは、福島大学で生物を専門とする教員から学んだ、自然環境の復元・再現という視点で行った。本校は福島大学の附属学校であるため、生物を専門とする大学教員から、ビオトープの考え方や環境保全の考え方などを学びながら、環境保全活動を行っている。
 また、令和8年の5月ごろ、シジュウカラの産卵を確認することができた。また、シジュウカラの雛が孵化したことがわかった。なぜシジュウカラが来たのか明確な理由は分からないが、おそらく軽微な環境の変化が関係していると考える。

(ⅱ)生徒たちがビオトープ活動を波及させる取り組み「広める活動」
 本校では、主に校内と校外にビオトープ活動を発信している。校内では、ビオトープ内でベストショットを狙う「附中ビオトープ フォトコンテスト」や3学年の川柳の授業を活用し、フォトコンテストで最優秀賞を撮った写真で川柳を詠む「附中ビオトープ 川柳コンテスト」を行っている。現在、川柳コンテストで最優秀賞をとった句に音源をつけて、人感センサーとMicro:bitを用いて人が通った時に音源が自動で流れるシステムを制作している。本校の正面玄関に設置をして生徒たちにビオトープの存在を身近に感じさせる狙いがある。
 校外では、生徒たちが主体となってビオトープ活動を波及させるサミット「Enviroment Summit of Fukushima(旧 ふくしまビオトープ子どもサミット)」を令和7年12月3日に行った。主な内容としては、各校の取り組み紹介やグループ協議であった。令和7年の参加人数が少なかったため、令和8年のEnvironment Summit of Fukushimaでは、魅力的な内容にしていきたいと考えている。また、本校では年に一度学校公開という福島市内・外や県外の教師の方が訪れて本校の研究・授業を見る行事がある。ビオトープ管理委員会は、学校公開生徒実践報告という発表で多くの先生方に本校のビオトープ活動を発信することができた。


成果・工夫した点

(ⅰ)生徒主体で制作・管理をしている中庭ビオトープ「生徒たちが自発的に行う活動」
 生徒たちは、ビオトープの課題や改善するべき所を自発的に見つけ、それを解決するために、教職員の助けも得ながら改善をしている。また、本校ビオトープは夏休みの自由研究などのサンプルとしても活用されている。例えば、コドラート調査という、ビオトープの敷地の中をコドラート(正方形)に分けて、その中にいる生物調査を行い、ビオトープ内の生態調査をすることなどだ。他にも、ビオトープ内池の水位がとても不安定なため、集水ダムを作って水位を安定させる研究もある。
 昨年度は、『「ビオトープで生物多様性を!」〜二年目附属中中庭ビオトープの生物調査〜』が、野口英世賞で最優秀賞を受賞、『福島大学附属中学校ビオトープ空間における最適な気象観測について』が、野口英世賞で優秀賞を受賞した。今年新しく始まったビオトープ研究はビオトープ内池の水位維持についてである。生物調査では、令和6年度から令和7年度にかけて消滅した生物は18種、発生した生物は16種であり、それぞれ観察できる植物のおよそ3分の1にあたることがわかった。
 新しく研究が始まったビオトープ内池の水位維持の動機について説明すると、ビオトープ内池の水位が不安定で、夏になると水が枯渇してしまい、ヤゴやその他生物が暮らすことができなくなってしまう課題があった。ビオトープは、なるべく自然界に近づけ、人の手をなるべく加えないでおくべきだと考え、水道水の注入は適切ではないと考えた。水位を増やすためには、雨水を回収し、水位が下がった時に適宜注入するという方法になった。そこで、どのようにして雨水を集め、貯蔵するかを研究した。屋上にセルロース繊維とアスファルト製の波板を傾けて設置し、雨樋、塩ビ管、ホースで池へ雨水を送る簡易集水ダムを制作した。水位は支柱の目盛りで測定し、福島市の降水量とあわせて、雨水回収量、蒸発浸透量、送水効率を求めた。さらに、流速が上がると雨樋を越流する課題に対し、大きめの石と角のある小石を波板部に設置して水の勢いを弱め、パイプ上部にはごみ詰まりを防ぐネットを取り付けた。5000mLの水を流す実験では4950mLを回収でき、送水効率は約99%であった。8月4日から19日の16日間の総降水量は101mmで、集水ダムによる雨水回収量は約0.342m³(342L)、水位上昇量は17.1cmと推定された。一方、蒸発・浸透による水位低下は1時間当たり約0.10cmで、ダム1台だけでは平均的な月降水量で水位を維持することは難しいことが分かった。今後はダムを合計5台に増設し、貯水タンクの設置やホースの傾斜の改良を行い、安定した水管理を目指す予定である。この自由研究は福島高校との交流で改善点を教えていただいた。

(ⅱ)生徒たちがビオトープ活動を波及させる取り組み「広める活動」
 校内で生徒たちがビオトープ活動を波及させる取り組みにおいては、「附中ビオトープ フォトコンテスト」や「附中ビオトープ 川柳コンテスト」によって、全校生徒のビオトープに対する意識が上がったと考える。なぜなら、令和8年度のビオトープ管理委員会に入った1学年の生徒が去年よりも増えているからと考察した。また、「附中ビオトープ フォトコンテスト」や「附中ビオトープ 川柳コンテスト」は、校内を巻き込んで開催・投票をしたため、ビオトープへの認識が上がったと考える。
 生徒たちがビオトープ活動を波及させる取り組みにおいて、多くの賞をいただいた。全国学校・園庭ビオトープコンクール発表大会では、特に体験活動や学習活動の内容・成果で秀でていると認めていただき、文部科学大臣賞をいただいた。また、令和8年は、Green Blue Education Forumに入賞し、他校と交流をすることができた。しかし、ビオトープには完成形がないため、今後ともビオトープ管理委員会が中心となってビオトープをより良いものにしていけるよう工夫などを施していく予定である。


🏫学校情報

福島大学附属中学校
〒960-8107 
福島県福島市浜田町12番26号