擬態をする生きもの partⅡ
2年前に掲載した「擬態をする生きもの」がそれなりに好評?だったので、蛾でパートⅡを書いてみました。あれから2年で出会いも色々ありましたが、生きるために進化し生き残った生きものたちの姿を堪能してください。
蛾の中でも擬態でよく話題に出るのが尺取虫(しゃくとりむし)と呼ばれるシャクガの幼虫です。

どこにいるか分かりますか?

真ん中の枝のようなものがそうです。これはトビモンオオエダシャクの幼虫で、上端が頭で枝に擬態して身動きもしません。そのため、こんなことも。

別のトビモンオオエダシャクですが、枝に擬態していたらアキアカネにとまられて困ってしまっています。アキアカネも「何か違う?!」と思ってこの後すぐに離れてしまいました(笑)
こちらはクロクモエダシャクの幼虫。ヒノキの葉に擬態するために進化したちょっとかっこいい幼虫です。葉の形に似せた芸術品です。


こちらは尺取虫の中でも特に擬態上手なクワエダシャクの幼虫。

これも芸術の域ですよね。中央に黒い小さな生きものがいますが、こちらはトビケラの仲間。これに目がいってしまい眺めていると、その下にクワエダシャクが擬態していてびっくりしました(笑)。
これはエダシャクではありませんが、ヤガの仲間でコウンモンクチバの幼虫。

完全に同化しています。餌を食べるときだけ葉がある枝の先端付近に行き、食べ終わると太い枝まで戻ってきて擬態するということを繰り返します。ただ、横から見ると丸見えです(苦笑)。

こちらはハイイロセダカモクメの幼虫。ヨモギの花に擬態しますが、とても美しい幼虫です。イモムシの類が苦手な人でもこれは大丈夫なのでは?


こちらはマツキリガの幼虫。アカマツの葉に擬態しています。


白い筋といい、頭の色といい、擬態のために進化したカラーリングに驚かされます!
マツ科の葉に擬態する種はマツキリガだけではなく何種類かいるのですが、皆、擬態のために同じようなカラーリングになるようです。下はクロスズメの幼虫。

こちらはヒメヤママユの幼虫。どこにいるか分かりますか?

大きくてとても目立つように思いますが、緑に溶け込むと保護色になっています。

成虫も負けていません。こちらはアカエグリバ。何となくこれかなというのは分かると思いますが、どうなっているか首をかしげてしまいそうですね(笑)。中央の赤っぽいのがアカエグリバですが、逆さになって枝にとまっています。

これは樹皮に擬態したオオトビスジエダシャク。彼らは自分が自然に同化できる場所を的確に選んでとまります。何で分かるのだろうかと不思議に思いますが、それができないと捕食されてしまうので、自分の身を隠せる場所にとまる能力というのも進化の結果なのでしょう。


これはフィリピンで見た名も知らぬ蛾ですが、絶妙な場所を選んでとまっていると感動してしまいました。この蛾にとってはベストポジションですね!


地面に転がっている枝のようなものはツマキシャチホコ。これも芸術的な色合いですよね。

知らなければ枝が落ちているだけに見えます。蛾とは思わないですよね。

左が頭です。ツナキシャチホコは都市部の公園でも見ることができますので探してみてください。
蛾の世界で面白いのはこれだけ特異的な風貌なのに、同じような蛾が別にいること。ツマキシャチホコはシャチホコガ科ですが、シャチホコガ科ではなくヤガ科にも同じような蛾がいます。
こちらはその一つのキバラモクメキリガ。写真でご紹介できませんが、タカオキリガやアズサキリガなどもっとツマキシャチホコに似た形状、配色のものもいます。科レベルで違うのに擬態の進化する方向が同じというのは興味深いところです。

今回は蛾だけで擬態を書いてみました。次回は蛾以外も交えて書いてみたいと思います。お楽しみに!

プロフィール
藤井 幹(ふじい・たかし)公益財団法人日本鳥類保護連盟調査研究室長。調査で自然の中にいる時間も長いが、その中で生物が生き抜くために進化した擬態の数々にはいつも驚かされ興味を抱いている。著書に『自宅で楽しむバードライフ』(文一総合出版)『野鳥観察を楽しむフィールドワーク』(誠文堂新光社)『羽根識別マニュアル増補改訂版』(文一総合出版)、『世界の美しき鳥の羽根 鳥たちが成し遂げて来た進化が見える』(誠文堂新光社)、『動物遺物学の世界にようこそ!~獣毛・羽根・鳥骨編~』(里の生き物研究会)、『野鳥が集まる庭をつくろう-お家でバードウオッチング-』(誠文堂新光社)など



