
姫路市「安富町花あじさい復活プロジェクト」
🏫姫路市立安富中学校 📍兵庫県
〇活動期間:2023年6月~
〇参加人数・部活名等
全校生徒100名(内:安富地域貢献チーム15名)教職員15名 共創パートナー(地域・企業・行政・PTA)約50名
〇活動場所
学校周辺、安富町内及び姫路市内
活動内容
【背景:シカ食害による地域のシンボルの喪失】
兵庫県姫路市安富町は、かつて数万株が咲き誇る「ホタルとあじさいの町」として知られていました。しかし、10年ほど前から深刻化したシカの食害により、町のシンボルであるあじさいは最盛期の10分の1以下に激減しました。壊滅的な現状を前に、地域の大人の間では「もう元には戻らない」という諦めの声が広がっていました。
2023年6月、この危機を新聞報道で知った安富中学校の生徒たちが、「自分たちの手で地域の宝を取り戻したい」と自発的に立ち上がり、有志による「安富地域貢献チーム」を結成しました。これが、学校を核とした「安富町花あじさい復活プロジェクト」の始まりです。
【活動の目的:野生生物との「緩やかな共生」と環境再生】
目的は単なる景観の再生に留まりません。近年日本全国で野生生物との共生が大きな問題になっています。私たちはシカを単に排除・駆除の対象とするのではなく、人間と野生生物が適切な距離を保ちながら共生できる町を目指しています。
1.生物多様性の保全
シカの食害等で少なくなっている地域のあじさいやヤマアジサイを保全しています。兵庫県の在来種である「幻のあじさいシチダンカ」を増やして植栽しています。
2.グリーンインフラの再生
日陰でも光合成能力が高いあじさいの特性を活かし、未利用地を「炭素吸収源」として再生するグリーンインフラの整備を実施しています。これは防災面では土砂の流出を未然に防ぎ、生物のすみかとなるビオトープにも繋がります。
3.持続可能な社会の創り手の育成
中学生が核となり、地域・企業・行政と協働して課題解決に挑むことで、中学生の郷土愛を高め、持続可能な社会の作り手の育成につなげるESDのモデルです。
【具体的な活動内容:4つの活動の柱】
本校では、総合的な学習の時間「やすとみタイム」を核に、以下の活動を展開しています。
1.「親しむ・理解する活動」:地域文化歴史の継承と科学的探究
毎年6月、地域の「あじさいクラブ」から挿し木の技術を直接継承しています。また、校内玄関に設置した「アクアポニックス(循環型農業)」装置を用い、地元の川魚の排泄物を栄養として、植物を育てることで「命と資源の循環」を日常的に感じています。
2.「守る活動」:実証実験に基づくシカ対策と在来種保全
シカを排除するのではなく「住み分け」を図るため、物理的な防護柵の設置に加え、シカが嫌う匂いを持つハーブ類を混植する「ソフトな対策」の実証実験を、専門家の知見を得て行っています。また、神戸市立六甲山小学校との交流を通じて兵庫県の貴重な在来種「シチダンカ」を譲り受け、校内や地域での増殖・保全に努めています。
3.「広める活動」:学校を核とした活動を世界へ発信
大阪・関西万博の共創チャレンジに登録し、中学生が地元企業へプレゼンテーションを行い、協力企業を募りました。5者共創(学校・PTA・地域住民・企業・行政)により、それぞれの持つリソースを提供してプロジェクトを持続可能な活動に発展させました。
生徒が作成した活動PR動画は、大阪・関西万博の大型ビジョン「EXPO VISION」の上映コンテンツとして教育機関として全国唯一採用され、会場で上映されました。私たちの活動を世界へ向けて情報発信しました。
4.「循環させる活動」:山と海を繋ぐ資源循環
地元水産会社から提供される海洋残滓由来の堆肥を活用する「山と海のサーキュラーエコノミー」を実装しました。海からの資源を山の栄養として還元し、流域全体の豊かな生態系を守る実践を行っています。
PR資料
📺 活動紹介動画
成果・工夫した点
1.工夫したこと:教育課程に位置づけた「安富中ESDモデル」として、探究と資源循環を実装し、単なる「花いっぱい運動」に留まらず、NbSの考えに基づいたアプローチも実践しています。
(1)炭素吸収源としての可能性
あじさいが低光量(日陰)でも高い光合成能力を維持する特性に着目しました。これにより、従来は緑化が困難だった日陰の未利用地を優秀な「炭素吸収源」へと転換するグリーンインフラとして再生させています。
(2)アクアポニックスによる育苗研究
地元の川魚の排泄物を微生物が分解し栄養とする循環型農業を校内に構築しました。この研究により、通常18か月かかる育苗期間を12か月に短縮(33%短縮)する手法を見つけました。
(3)野生生物との緩やかな共生
専門家の知見を得て、シカを排除・駆除するのではなく嫌鹿植物(ハーブ等)の混植や物理的な防護柵による「住み分け」を実証実験しています。これは野生動物の駆除だけに頼らない環境負荷の低い管理手法で汎用性もあります。
(4)山と海を繋ぐサーキュラーエコノミー
共創する水産会社から播磨灘の海洋残滓由来の堆肥を提供していただき、校内においてあじさいを育てています。これは海からの資源を山の栄養として還元し、再び川を通じて海へ還すことで、林田川流域全体と播磨灘を豊かな海にするための資源循環に発展してきています。
2.地域との連携:中学生が核となる5者の共創
中学生が「地域課題の傍観者」から「まちづくりの主体」へと変容し、多様な大人を巻き込みながら共創しています。
(1)5者の共創の確立
学校・PTA・地域住民・地元企業・行政が対等なパートナーとして連携・共創しています。
生徒が企業へ自らプレゼンテーションを行い、協力企業を募るという社会実装型の取り組みを実施しています。
(2)伝統知の継承(あじさいクラブ)
地域の有志による「あじさいクラブ」が誕生し、生徒は「地域の師匠」から挿し木技術を直接継承しています。この交流は、大人にとっても中学生に頼られるという新たな「生きがい」の創出に繋がっています。
(3)多世代・異業種交流の場
苗づくりや植栽活動には介護施設の高齢者や企業関係者、小さな子供など、延べ1,200名以上が参加しています。あじさいを介して、普段関わることのない多様な世代・職種が交差するコミュニティが形成されました。
(4)地域経済との連携
生徒がデザインした地酒ラベルの製品化や、開花後のあじさいをドライフラワー化するノベルティ開発など、地域資源の価値転換(アップサイクル)を企業と協働して進めています。またあじさいを観光資源に変えていき、地域の活性化に繋げます。
3.継続している点:活動を一過性のイベントで終わらせないため、教育課程の中に組み込んで継承しています。
(1)探究学習「やすとみタイム」
総合的な学習の時間「やすとみタイム」の核として教育課程に位置づけ、年間を通じた活動サイクル(6月挿し木、11月定植)を定着させています。PDRサイクルで、準備(Prep)・実行(Do)・評価(Review)のサイクルを回し、生徒の意識変容を可視化しながら、毎年改善を重ねています。
(2)「縦割り班」による世代間継承
3学年が混ざり合う縦割り班で活動することで、上級生から下級生へ技術だけでなく、地域への想いや伝統を直接語り継いでいます。
(3)外部団体とのコーディネート
学校事務職員(社会教育士)が、外部機関との調整や資金確保、情報発信を一手に担っています。これにより、教員の負担を抑えつつ多様な外部団体と連携を継続し、さらに発展的な取組を実施できています。
4.今後期待されること:「EXPO2025」から「グリーンEXPO2027」へ
EXPO2025から誕生した共創プロジェクトをEXPO2027に引継ぎ、地域の再生に留まらず、全国の中山間地域へ向けた「希望の処方箋」となることを目指しています。
(1)「点から面」への拡大
「あじさいの里」を中心とした活動を安富町全域へと広げ、企業の敷地や限界集落(かかしの里)への定植を計画しています。町全体を再びあじさいの名所として復活させることを目標としています。
(2)地域への貢献活動
地酒やノベルティ製品の開発を行いながらプロジェクトをPRすることで町の魅力を高めます。
地域イベント「味彩フェス」に出展し、あじさいを活用したワークショップを通して「野生生物との共生」について情報発信します。
(3)「安富中ESDモデル」の発信
少子高齢化と獣害に悩む地域や全国の小規模校に対し、資源循環とパートナーシップを軸としたこのESDモデルを広く情報提供していきます。中学生の「本気」が大人を動かし、「野生生物との共生」と「地域のウェルビーイング」を両立させる姿は、持続可能な未来社会のデザインそのものです。また活動の歩みを絵本化することで、この「地域の歴史と若者の挑戦の物語」を次世代へ、そして世界へ語り継いでいく計画です。
🏫学校情報
姫路市立安富中学校
〒671-2401
兵庫県姫路市安富町安志320-1
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