調べて・守って・伝える
~明石の生物多様性~

〇活動期間:2022年~
〇参加人数・部活名等
自然科学探究部生物班 生徒15名、その他生徒40名
〇活動場所
学校周辺のため池5か所、男鹿島(姫路市)、石ヶ谷公園、石ヶ谷墓苑(連絡通路を含む)、明石市立高丘東中学校、明石市立高丘西小学校

🌐 科学探究部生物班ページ

活動内容

 本校では2022年度から、科学探究部生物班の生徒を中心に、地域の生物多様性を守ることを目的として、絶滅危惧種ネビキグサの保全と、特定外来生物クビアカツヤカミキリの分布拡大防止に取り組んでいます。活動の出発点は、生徒が実際に地域の自然を見て感じた疑問や驚きです。ネビキグサでは、約15年前の調査記録と比べて複数の個体群が大きく衰退、あるいは消失していることを知り、「なぜ減っているのか」「どうすれば残せるのか」と考え、調査を始めました。一方、クビアカツヤカミキリでは、本校近くの石ヶ谷公園で兵庫県内初の確認があり、その後、学校周辺の桜並木でも被害木が伐採されたことから、身近な地域で起きている問題として調査を始めました。
 ネビキグサについては、生徒が生育地の照度や水分条件を調べ、学校でも水位や光条件を変えた生育実験を行いました。その結果、土壌表面と同程度の水位で、十分に光が当たる環境が生育に適していることが分かり、その成果をもとに、生育地で他種の植物を刈り取るなどの環境改善を、地域や行政と協力して続けています。さらに、「種子はできるのに、なぜ芽生えが見つからないのか」という新たな疑問から、発芽実験、花粉や染色体の観察、種子の生存性、胚発生、遺伝的多様性の解析へと研究を発展させてきました。前年の結果から生じた疑問を次の研究につなげ、先輩から後輩へ調査方法や問題意識を引き継いでいます。
 クビアカツヤカミキリについては、専門家から成虫やフラスの見分け方を学んだ上で、生徒が学校周辺のソメイヨシノやウメを一本ずつ確認しています。現在は約1,800本を年2回程度調査し、2022年から約4年間で延べ約15,000本を調べ、50本以上の被害木を見つけました。疑わしい木を生徒が見つけ、専門機関が同定し、その情報をもとに行政がネット設置や薬剤処理、伐採などを行う流れができており、高校生の調査が地域の防除活動の一部となっています。
 また、調べて終わるのではなく、自分たちが学んだことを地域に伝える活動も大切にしています。生徒が先生役となり、小学生にため池の希少植物やクビアカツヤカミキリについて説明し、実物の観察や校庭での調査を一緒に行っています。中学生には、DNA抽出やPCR、電気泳動を体験する講座も実施しました。さらに、幼児や小学校低学年向けの絵本を生徒が作成し、読み聞かせにも取り組んでいます。
 本校の活動は、「地域で気づく→自分たちで調べる→保全につなげる→次の世代へ伝える」という流れを、生徒自身が地域の方々、行政、専門家、大学などと協力しながら積み重ねてきたものです。研究、保全、普及を別々の活動にせず、互いにつなげながら、地域の生物多様性を守る活動として継続しています。


成果・工夫した点

 本校の活動で工夫している点は、絶滅危惧種を「減らさない」取り組みと、特定外来生物を「増やさない」取り組みを、地域の生物多様性を守る一つの活動として進めていることです。どちらも、生徒が現地で感じた疑問を出発点に、調査・研究で得た結果を保全に生かし、その内容を地域へ伝えています。
 ネビキグサでは、生徒が野外の照度や水分条件を調べるだけでなく、校内に水位や光条件を変えられる実験装置を作り、生育に適した条件を確かめました。その結果、土壌表面と同程度の水位と十分な光が生育に適していることが分かり、他種の植物の刈り取りなど、現地の環境改善に役立てています。また、「種子ができているのに、なぜ芽生えが見つからないのか」という生徒の気づきから、発芽実験、花粉や染色体の観察、種子の生存性、胚発生、遺伝的多様性の解析へと研究を発展させました。これらの実験や調査では、生徒たちが過去の文献を自ら読み、実験方法を考案しました。
 クビアカツヤカミキリでは、専門家からフラスや成虫の見分け方を学んだ生徒が、樹木を一本ずつ調べて記録しています。調査方法は、技術を習得した生徒からほかの生徒へと引き継がれています。小学生への授業では、クイズ、成虫標本、フラスの比較、校庭での調査を組み合わせ、児童が自分で違いを見つけられるようにしました。高校生が一方的に説明するのではなく、児童の気づきを聞き、自分たちも学び直す授業にしていることも工夫の一つです。また、イラストを描くことが得意な生徒の発案で、小学生や幼児を対象としたクビアカツヤカミキリの絵本を作成しました。

【地域との連携】
 ため池での活動は、主池を守る会、一般社団法人のはらくらぶ、明石市、教育委員会などと進めています。ネビキグサの研究では、神戸大学、東京大学、兵庫県立人と自然の博物館から助言を受けています。クビアカツヤカミキリの活動では、兵庫県、明石市、樹木医、博物館、企業、近隣の小中学校などと連携しています。生徒が被害の疑いがある木を見つけ、専門機関が同定し、行政がネット設置や薬剤処理、伐採を行うという役割分担ができており、高校生の調査が地域の防除に直接つながっています。生徒は支援を受けるだけでなく、現地調査、記録、行政への情報提供、小中学生や地域住民への説明を担っています。

【継続している点と成果】
 活動は2022年度から続いています。ネビキグサでは、前年の結果から新しい問いを見つけ、先輩から後輩へ調査方法や問題意識を引き継いできました。研究成果は、JSEC2024優秀賞、全国高等学校総合文化祭自然科学部門出場、染色体学会年会高校生ポスター最優秀賞などにつながりましたが、受賞で終わらず、生育地の環境改善とその効果の確認を続けています。
 クビアカツヤカミキリでは、約1,800本のサクラやウメを年2回程度調査し、約4年間で延べ約15,000本を確認して、50本以上の被害木を見つけました。行政や専門家からも、生徒による継続的な調査が明石市での被害拡大の抑制に大きく役立っているとの評価を受けています。また、ため池自然観察会は2022年度から、クビアカツヤカミキリの小学校授業は2023年度から毎年続けています。さらに、中学生向けの遺伝子解析講座や、幼児・小学校低学年向けの絵本の作成と読み聞かせにも活動を広げました。

【今後期待されること】
 今後は、ネビキグサの胚発生と遺伝的多様性の解析を進め、種子から個体を再生する方法を探るとともに、刈り取りなどの環境改善が個体群の維持にどの程度役立つかを継続して確かめていきます。クビアカツヤカミキリでは、同じ調査範囲を繰り返し調べることで被害の変化を捉え、早期発見と行政による処置につなげていきます。また、イベントの開催や外部での発表を通して、小中学生や地域住民に「見分けられる人」「異変に気づける人」を増やし、高校生だけでなく、地域全体で野生生物を守る活動へ育てていきたいと考えています。


🏫学校情報

兵庫県立明石北高等学校

〒674-0053
兵庫県明石市大久保町松蔭364番地の1