
蛍池ホタル復活プロジェクト
🏫大阪府立刀根山高等学校 📍大阪府
〇活動期間:2015年~
〇参加人数・部活名等
生物エコ部 生徒36名、教員3名(令和8年度)
〇活動場所
刀根山高校 校内林、千里川、猪名川、池田市細河地域周辺、大阪大学豊中キャンパス内
活動内容
本プロジェクトは蛍池地域にホタルが生きていける自然環境を復元することを目標としており、2015年から開始した。地元の方への聞き取り調査から、刀根山高校の最寄駅である蛍池の由来となった螢ヶ池の周辺には、1950年代まではホタルがいたことがわかっている。さらに調査を進め、現在でもゲンジボタルやヘイケボタルの餌となるカワニナが生息し、幼虫が上陸できる場所もあることを確認することができた。
<ホタルの飼育>
本校では、川へ放流することを目標に、ゲンジボタルとヘイケボタルを卵の段階から飼育している。現在はゲンジボタル幼虫約2,000匹、ヘイケボタル幼虫約250匹を飼育している。 餌として、近隣の川で採集したカワニナやヒメタニシの殻を割って身を細かく切り、食べやすい状態にして与えている。また、毎日トレーの汚れを取り除き、新しい水を補充している。
ヘイケボタルは飼育下での蛹化・羽化・産卵の手法を確立できている。4月に幼虫が蛹化し、5月下旬頃に羽化、交尾を終えたメスが、水槽内のコケに産卵する。卵からふ化した幼虫を順次回収して、次世代の個体を飼育している。
一方、ゲンジボタルは、飼育下での蛹化が難しいため、野生の成虫から採卵し、回収した卵を終齢幼虫まで育て、幼虫を元の川へ放流することで、地域の個体数増加を目指している。今後は、ゲンジボタルの蛹化条件を明らかにし、完全養殖をめざしている。
<啓発活動>
ホタルの生息環境を整え、生息地の拡大につなげることを目標に、千里川や猪名川での生物調査や、地域での啓発活動、成果発表を継続している。 特に、本校の近くを流れる千里川の上流にはゲンジボタルが生息しており、蛍池地域におけるゲンジボタルの復活場所として有力な候補である。毎年3回、春と夏は昆虫類や魚類、冬は水鳥を中心に生物調査を行っている。現在のところホタルの生息は確認できていない。しかし、これまで確認されていなかった、あるいは少なかったコオイムシやギギが見つかった。また、下流域に多いスミウキゴリが中流域でも増加しているほか、カワセミの目撃数も増えている。これらの変化は、河川の自然度が回復しつつあることを示すと考えている。
少数ながらカワニナが確認されていること、同じ水が流れる周辺水路にはカワニナやヒメタニシが多数生息していることから、水質はホタルの餌となる貝類が生息可能な状態にあると推測している。一方で、河床に泥質が多いことや、石などの表面がマット状の藻類に覆われていることは、カワニナの定着に適さず、ホタルの定着も妨げる要因であると考えられる。今後は調査結果を基に、ホタルやカワニナが生息しやすい環境をつくり、維持する方法を模索している。
地域連携では、特に小学校との連携に力を入れている。2019年に蛍池公民館・箕輪公民分館と連携し、箕輪小学校の児童を対象として始めたホタル観察会は、現在では箕輪公民分館に加え、刀根山、蛍池、桜井谷の3つの公民分館とも連携し、4つの小学校で実施している。毎年5月末頃に開催される観察会には、毎回100~200名が参加する。参加者は地元の有識者からホタルの生態や生息環境について説明を受けた後、実際のホタルを観察する。暗い展示室での安全管理や注意点の説明に加え、水槽周辺でホタルの種類や光り方の違いなどの説明を、本校生徒が担当している。
2026年には大阪府人権局の要請で、ホタルと人権をテーマとするイベントをピースおおさかで実施した。教員が予定調整や安全管理を行いながらも、ホタルの生態紹介や環境保全の意義など、資料作成も含めて企画の大部分を生徒が担った。
また、高校生研究発表会をはじめ、豊中市や猪名川河川事務所が主催する市民活動発表会などでは、本プロジェクトについてポスター発表をしている。発表活動は、地域の人々にホタルへの理解を広げるとともに、生徒自身が活動の意義を整理、再発見し、調査や探究へのモチベーションを高める機会にもなっている。
<ヒメボタルの保全>
ヒメボタルは飼育下での繁殖が難しいため、主に生息地の保護・拡大のための活動を行っている。豊中市でも最大級のヒメボタル生息地である大阪大学豊中キャンパスで幼虫の個体数を継続的に調査し,ヒメボタルの保全につながる環境条件を検討している。
ヒメボタルはメスは飛べないため、一度失われた生息地の復活や、隣接地域への自然拡散は難しい。現在、施設更新にともなう建設予定地となっている生息地から別の場所へ幼虫を移植する活動も進めている。
この個体群の一部を、2021年に豊中キャンパスから約1km離れた本校の校内林へ移植した。校内林にある竹林へ幼虫を放流した結果、その後も自然繁殖した成虫を確認しているが、個体数は毎年減少している。生息地を維持するためには追加放流が必要で、安定した飼育方法の確立が課題である。
PR資料
成果・工夫した点
<ホタルの飼育>
本校には恒温飼育室が存在せず、飼育用の恒温器は高価であるため、ホタルの飼育を、夏の室温が40度近くまで上昇する教室で行っていた。例年、高温や水質の悪化、水の蒸発などが原因で多数の幼虫が死亡していたが、2023年から、プランクトンの飼育方法にヒントを得て、比較的安価に手に入る小型のワインセラーを導入し、幼虫の死亡率を大幅に抑えることができた。一方で、小型ワインセラーでは飼育できる幼虫の数に限りがあり、大半の幼虫は死亡リスクの高い室内飼育が続いている。夏の水温を抑え、水質を保つための更なる工夫を模索している。
<地域との連携>
本校のすぐ近くにある豊中市立刀根山小学校の保護者など、地域の有志を募り、ホタルの幼虫を育ててもらっている。育てた幼虫を小学校ビオトープに放流し、ビオトープにヘイケボタルを定着させる活動につなげている。
このビオトープ池は、元々あった池が2018年の大阪北部地震で損傷したものを、2019年に教員、保護者、高校生が協力して、ヘイケボタルが生息しやすいように作り直したものである。2019年に幼虫を放流し、翌年の2020年には多数の成虫が観察された。
「ホタルの里親」は、小学校ビオトープへの放流を目標としたしくみであるが、本校の幼虫が大量死した場合に、地域の里親が育てている幼虫を本校に戻すことで、個体群を安定して維持できるようにしている。
2017年に箕輪小学校で実施した「地域のホタル観察会」は、コロナ禍を経て拡大し、現在では箕輪・刀根山・蛍池・桜井谷の4つの市立小学校で実施しており、各校で100名以上の参加者がある毎年恒例の行事となっている。
<人材の育成>
2015年にプロジェクトがスタートしてから、飼育方法や地域連携など、生徒が入れ替わる中でも継続して改善、発展させてきた。
2023年以降、資料の作成や準備、参加者への対応など、プロジェクトの実働部分を可能な限り高校生に任せるようにしている。企画や調整の段階から関わることで、「当日の労働力」ではなく、一人の活動者としての自覚を持って活動に参加し、主体的な姿勢を育成することを目指している。
高校生が主体となる活動では、1人の高校生が関わるのは基本的に3年間だけであるが、活動者そのものは安定的に存在している。また、卒業後も活動に参加する卒業生が複数おり、後輩の指導役や相談役として活躍している。毎年入学する高校生が主体的な活動者に成長していく過程をどのように支援するか、今後も効果的な働きかけを模索していきたい。
<期待されること>
ホタルを象徴種として活動の輪を広げるホタル復活プロジェクトにおいて、主要な軸となっているのは「活動者の育成」である。
地域との連携活動を通して、生物や環境の保全について、広く一般の人に知ってもらい、身近なことから活動に参加する機会を増やしていくことが狙いの一つである。
そして、これらを高校の部活動として行うことで、高校生に技術や視点を体験させ、「蛍池」が別の地域であっても、「ホタル」が別の生物であっても、「復活」ではなく保全や保護であっても、保全活動を行う知識と技術、そして意思をもって中心的に活動できる人を育成することが、重要な目標である。
🏫学校情報
大阪府立刀根山高等学校
〒560-0045
大阪府豊中市刀根山6丁目9番1号
この学校の活動を応援する
(Googleフォーム)
