ヌカエビの保全活動と 外来種希少種かるたによる啓発活動

〇活動期間:2015年~
〇参加人数・部活名等
生物部 生徒19名 教員2名
〇活動場所
高麗川、槻川、越辺川、入間川、新河岸川、荒川本流

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活動内容

【荒川水系におけるカワリヌマエビ属(外来エビ)およびヌカエビ(在来エビ)の生息調査】
 川越女子高校生物部では2015年から体長が2cm~3cmのエビに着目して調査を開始しました。中国や台湾から釣り餌やペットとして持ち込まれたカワリヌマエビ属シナヌマエビ(外来種)が、ヌマエビ属ヌカエビ(在来種)【埼玉県レッドデータブック2018年にて準絶滅危惧種(NT2)に指定】の生息域を脅かしています。調査は生徒が直接川に入り、ガサガサと呼ばれる方法で手持ち網をゆすって捕獲します。捕獲したエビは学校で個体の体長やとげの有無を確認して種同定し、写真を撮って記録しています。調査した地点の川の水温、流速、pH、水質の調査も行います。2021年以降の調査では荒川水系下流域~中流域は100%カワリヌマエビ属となっており、荒川本流の上流地域(長瀞地区)にも及んでいます。一方、ヌカエビは、荒川水系支流で護岸工事が行われておらず、自然の多様な環境が残され水質が保たれている中上流域(高麗川、槻川、入間川、越辺川)にカワリヌマエビ属と混在して生息しています。2023年8月の定期調査で、これまで外来種と在来種が混在していた高麗川の鹿台橋付近でヌカエビが全く見られなくなったことから生徒が危機感を強くし、ヌカエビの保全をする必要があるとしてさらに上流の調査を行いました。現在、高麗川上流には100%ヌカエビが生息する場所を確認できています。しかし、2025年の調査でこれまで100%ヌカエビが生息していた高麗川白子橋付近にカワリヌマエビ属が侵入し、1年後90%以上占めて定着しつつあることがわかりました。カワリヌマエビ属は、夏の渇水の際に川岸を遡上し、上流に向かって勢力を広げており、継続したモニタリングの意義は大きいといえます。
【ヌカエビの保全】
 2022年より通常行っている水槽での飼育(ろ過装置を設置し月1回カルキ抜きした水道水利用して水替えを行う)では、ヌカエビの繁殖ができないことから、2024年には日本生態系協会を通じてTOPPAN(株)、テクセンドフォトマスク(株)にご紹介いただき企業連携することになり、「ヌカエビプロジェクト」としてTOPPAN朝霞事業所内にあるビオトープに高麗川で採取したヌカエビを放流し、保全をスタートさせました。ヌカエビプロジェクトのマスコットの図案は、部員が考えました。TOPPAN朝霞事業所のビオトープは、10年の実績があり地下水を汲み上げた水を使用し、埼玉県の希少種であるキンブナやホトケドジョウが放流されています。毎月の個体数調査を行っており、水質が確保され繁殖は成功していることが確認できました。2025年11月には、荒川知水資料館にヌカエビを寄贈し、荒川の在来種として展示紹介しています。今後、ビオトープで繁殖したヌカエビを自然に戻すことができるか、さらなる保全地への移譲も含め、企業と連携して検討しています。
【ヌカエビの人工繁殖】
 2025年の実験では、ヌカエビは稚エビになれば成体と同じように水質が悪化しても耐性があることを確認しました。2026年の実験では、ビオトープの水とヌカエビを利用してゾエアの人工繁殖を試みました。その結果、生息地の水を用いて温度を25℃程度に保ちグリーンウォーターを追加しながらろ過装置を使用すれば、水槽内でもゾエア期から稚エビへ成長させることができました。カワリヌマエビ属のエビはゾエア期がなく稚エビの状態でふ化するため、水質の悪い環境でも(水道水を用いても)繁殖が容易であることから、繁殖力の点で大きな差があることを実験によって確かめることができました。
【外来種希少種かるたの制作と啓発活動】 
 2022年に生態系保全のためには、小学生のうちから興味を持ってもらうことが大切だという部員のアイデアがきっかけで「外来種希少種かるた」を作成することになりました。絵と読み札を自分たちで考え、市販の名詞カードを使ってプリンタで印刷したのが始まりです。部員の発案で赤が外来種、緑が希少種として色分けしています。絵札の裏には生物の説明があり、特徴を知ることができるように工夫しています。年度ごとに新入部員が1枚ずつ作成して数を増やしています。外来種のカード21枚、希少種カード15枚のかるたとして2026年4月に三菱UFJ銀行川越支店のご支援により、箱入り50セットのかるたを印刷し、川越市内の学童クラブ32か所に寄付をしました。このかるたは、2023年から本校文化祭や川越市冬休み科学教室、埼玉県水環境課主催のイベントやボランティア活動等で小中学生や一般の方対象に年3~4回実施しています。

活動紹介動画


成果・工夫した点

 何より大切にしていることは、生徒の主体性を重んじていることです。実際に川に入ってエビを捕獲する体験を通して生態系のすばらしさを実感し、研究や専門の方のアドバイスを聞いて生態系を深く理解し、楽しみながら活動をしています。啓発活動では、高校生として生物多様性や生態系の保全に寄与するためには何ができるのかを考えて、生徒のアイデアを大切にし、生徒が中心となって活動しています。部員自身が活動を通して、作り出す喜び、伝える喜びを感じ、先輩からのバトンを受け継いでいくという使命感を見出して卒業しています。これらの取り組みによって部員が将来、研究者または市民として環境問題に寄与できる人材になることを期待しています。これらの活動は広く、学会や地域の環境フォーラム、高校生探究活動発表会など、さまざまな発表の機会を通して発信していて、みなさんに関心を持ってもらいたいと考えています。

【地域との連携】
 ビオトープを提供してくださっているTOPPAN朝霞事業所およびテクセンドフォトマスク(株)の皆様、日本生態系協会の方とビオトープの見学や調査を行い、ヌカエビをどのように保全していったらよいかを定期的に情報交換を行っています。かわごえ環境ネットの皆様とは、かわごえ環境フォーラムでの研究発表や調査の交流を行っており、かわごえ環境活動報告に研究内容を掲載させていただいています。2026年6月には、かわごえ環境ネットのこどもエコクラブで15組の家族にクビアカツヤカミキリについての出前授業を行い、一緒にクビアカ探しを行いました。外来種希少種かるたのご支援がきっかけで、三菱UFJ銀行川越支店にかるたを展示していただきました。印刷したかるたは、2026年6月に川越市役所教育財務課の方を通じて川越市内の学童クラブ32か所に寄付しました。直接寄贈した学童クラブでは、部員と児童が一緒になってかるたを実施し、大変好評でした。遊びながら外来種や希少種に興味を持ってもらえる教材として、今後も続けて枚数を増やしていこうと考えています。 

【継続している点】
 継続したエビの調査により、高麗川流域における外来種と在来種の分布割合は、降水量による水位の変化で季節変動や年変動があること、外来種と在来種の混在する地域では、普段は上流の繁殖地から水の流れにしたがってヌカエビが移動していること、川の水位が下がることで、外来種が遡上し外来種のいなかった場所に外来種が侵入してしまうということなど、モニタリングによる包括的な生態系の変化を把握することにつながっています。今年に入り、調査中に新たな外来種であるチュウゴクスジエビの侵入を発見しました。荒川水系では、今まさに様々な外来生物の脅威にさらされており、調査の重要性を実感しています。
 川越女子高校は、2013年から14年続いている高校生研究グループ「チームアライグマ」に所属し、外来種問題や生物多様性・生態系の保全をテーマに埼玉県の公立高校8校の生物系部活動が集まって活動しています。合同ミーティング、共同研究や野外調査、啓発活動を行っており、本校は毎年、この活動の中心的な役割を担っています。合同野外調査では、エビに限らず様々な生物を含めた調査を行うことで、生態系の理解を深めています。また、チームアライグマとして高校生によるシンポジウムを企画し、生徒が中心となって運営を行っており、広く一般の方々や環境に関する活動をしている方々、研究者の方と交流しています。チームアライグマの活動が、本校独自の啓発活動の原動力になりました。

【その他】
川越女子高校の活動がマスコミにも注目され、テレビ・ラジオ、新聞などに活動が紹介されました。
・TV・ラジオ  放送の出演
2024年9月3日NHK 総合テレビ ひるまえほっと 川越女子高校生物部「ふるさとのエビを救え!」
2024年10月29日NHKラジオ第一NHKジャーナル「川越女子高校生物部の活動」
・新聞掲載
2025年1月 1日 毎日新聞埼玉版 
2025年3月16日 埼玉新聞埼玉版 
2026年7月23日 埼玉新聞埼玉版
・受賞歴
2026年3月10日 水環境文化賞 児童生徒の部 みじん子賞 受賞(水環境学会主催)

【これから期待できること】
・ネイチャーポジティブの観点に立ち、企業と協力してビオトープの在来エビを新たな保全地に移譲する、または、自然に戻すことができないかを検討していきます。
・かるたを増やしていき、多くの人に外来種希少種を知ってもらい、川越女子高校が地域の生態系の保全・生物多様性についての啓発活動の担い手として貢献していきます。


🏫学校情報

埼玉県立川越女子高等学校
〒350-0041
埼玉県川越市六軒町1-23