
「ヤリタナゴの里」創出による生物多様性の保全
🏫群馬県立藤岡北高等学校📍群馬県
〇活動期間:2019年4月~
※本活動は主に2025年1月~現在
〇参加人数・部活名等
環境土木科2、3年生 29名、さかなぶ生徒16名、教員3名
連携者:藤岡市立神流小学校5年52名、職員5名 農家3名
東京北ロータリークラブ、関係者 30名
〇活動場所
藤岡市下戸塚 耕作放棄地を開墾したビオトープと水田、水路
活動内容
ヤリタナゴ保護の歩みと「野生絶滅」の危機
かつて群馬県内に広く生息していたタナゴ類は、開発に伴う環境変化により姿を消していった。
しかし1998年11月、県内では絶滅したと考えられていたヤリタナゴが藤岡市の岡之郷用水(笹川下流)で再発見され(推定30尾)、2000年7月には産卵母貝のマツカサガイやホトケドジョウとともに市の天然記念物に指定された。
当初は農家との合意のもと石積み水路(環境配慮型水路)が整備され、保護団体や地域住民の尽力により一時は2,000尾以上まで生息数が回復した。しかし、その後の農地整備等に伴う水路のコンクリート化や直線化、池沼の減少により生息環境が急激に悪化し、2022年の群馬県レッドデータブックでは「野生絶滅」と判定され、推定生息数は約40尾にまで激減した。
こうした保護活動の先細りと高齢化が懸念される中、2019年4月に群馬県立藤岡北高等学校の生徒が保全活動へ本格的に参画し、新たな展開が始まった。
2021年「ヤリタナゴ懇談会」の結成と保護体制の強化
保護活動の持続性を確保し体制を強化するため、2021年度に藤岡北高校を中心に、保護団体、行政、群馬県水産試験場、地域住民、有志らが連携する多主体協働の「ヤリタナゴ懇談会」が結成された。
この結成により、関与する主体数は5団体から24団体(4.8倍)へ、活動参加延べ人数は35人から237人(6.8倍)へと飛躍的に増大した。
懇談会では、水路の泥浚いや草刈り、粘質土から砂礫への河床改良、石段の設置、河川モニタリングといった総合的な生息環境整備が一体となって推進された。
さらに、ヤリタナゴの生息を脅かす条件付特定外来種のアメリカザリガニについて冬季駆除の有効性を実証するなど、科学的知見に基づいた外来種対策も展開された。
2025年「ヤリタナゴの里」創出と生物多様性の再生
2025年1月、かつてヤリタナゴが多数生息していた下がり川に隣接する耕作放棄地を活用し、土地所有者・協議会・高校の合意のもと「ヤリタナゴの里」創出プロジェクトが始動した。
同年5月には開墾・ビオトープ整備と並行して無農薬・無肥料でのコメ作り(「たなご米」)を開始し、2026年度には田圃面積が約10,000 m²(当初の5倍以上)へと拡大した。
水路とビオトープの物理的な連続性を確保した結果、放流されたギンブナやドジョウ、クロメダカの繁殖にとどまらず、タモロコやムギツクなどの在来魚、ミズカマキリ、タイコウチ、ゲンゴロウ、希少なコオイムシといった水生昆虫、多種のカエル類や鳥類が定着・繁殖した。
耕作放棄地と水田ビオトープの比較では、両生類・魚類が6倍に増加するなど、豊かな水辺の生態系が劇的に再生・保全された。
コミュニティの形成拡大と社会教育的成果
当初わずか7〜8名の高校生からスタートした活動は、藤岡北高校環境土木科の生徒全体、さらには地域社会へと大きく広がった。
2026年度からは地元の藤岡市立神流小学校5年生52名が事前学習や田植え・生き物調査に参加したほか、富岡市の環境保護団体や東京からの有志など県内外からの見学・体験者が集まり、200名を超える広範な地域コミュニティへと成長を遂げた。
高校生が開墾や代掻きといった「苦労して基盤を創る体験」を通じて高い達成感を得るとともに、小学生や地域住民への環境学習・農業体験の提供、さらには「たなご米」の販売活動を通じて、地域愛着をもつ人材の育成や交流人口の増加が達成された。
まとめと将来への展望 藤岡市におけるヤリタナゴ保護は、単なる特定の希少種の生息域内保全にとどまらず、「ヤリタナゴの里」創出を通じて地域資源や人々の協働を結びつけ、水辺空間とコミュニティの双方が持続的に再生する先進的なモデルを築き上げた。
先人から受け継がれてきた保護の「時間」と水路・水田の「空間」が結びついたこの取り組みは、今後OECM(自然共生サイト)への登録を目指しており、身近な自然環境の保全と地域活性化を両立させる先導的な事例として他地域への普及波及が期待されている。
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成果・工夫した点
・工夫したこと
1.地域に生息している藤岡市の天然記念物であるヤリタナゴを保護し、新たな生息環境をつくるため、耕作放棄地を活用してビオトープ(ヤリタナゴの里)を創出した。ビオトープ創出にあたり、地権者、地域の環境協議会、藤岡北高校、環境保護団体、行政が連携し、協働により実施に至った。
2.藤岡市のヤリタナゴは絶滅危惧IAから2022年群馬県レッドデータブックでは、野生絶滅となった。希少生物をただ単に守り、立ち入り禁止区域をつくり、捕獲禁止条例の作成だけでは絶滅まで、秒読みの状況となった。そこで生息地の創出に加えて、ビオトープに隣接する水田を無肥料・無農薬で栽培し、フナやドジョウを放流しコメの栽培を実践した。
3.たなご米の田植えや稲刈りには、多くの人々が参加しヤリタナゴを知る機会となった。2019年4月に、環境保護団体から依頼を受け、藤岡北高校の課題研究班、たった7人ではじまった保護活動が、新たにヤリタナゴ懇談会の結成、藤岡市外の有志の参加者の増加、東京北ロータリークラブの参加や地元藤岡市立神流小学校の参加など延べ200人での保護活動、たなご米栽培、収穫活動となった。
4.活動が継続するにつれて、藤岡北高校環境土木科の生徒を中心とする“さかな部“のメンバーも増加し、活動方法や調査方法、道具の使い方、プレゼン方法など先輩から後輩へと引き継がれている。
・地域との連携
環境保護団体、農家、藤岡市役所、群馬県水産試験場、地域住民、小学校や有志、県内外のNPO、大学など多義にわたっている。
・継続している点
1998年に絶滅した思われていたヤリタナゴが、藤岡市神流川支流の笹川で発見された。有志らがヤリタナゴを守るために環境保護団体を結成し、数少ないヤリタナゴの保護活動が地域住民、保護団体、水産試験場などの協力により20年以上継続されている。
・今後期待されること
1.OECM、環境共生サイトへの登録
2.身近な資源や人材を活用した環境保全をテーマとする地域づくりのモデルケース
3.生物保全をベースにした公園、運動場、農業体験など「ヤリタナゴの里」からまちづくりに展開
🏫学校情報
群馬県立藤岡北高等学校
〒375-0017
群馬県藤岡市篠塚90
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