岐阜の両生類・爬虫類を守る
~身近な生き物たちを未来へ~

〇活動期間:2019年4月~
〇参加人数・部活名等
自然科学部サンショウウオ班 生徒10名、教員1名
〇活動場所
岐阜県内(大垣市、海津市、岐阜市、本巣市、揖斐川町など)

🌐 自然科学部

活動内容

 近年、開発や地球温暖化の影響により、両生類・爬虫類の生息環境は急速に悪化しており、特に平野部では身近な種の減少が著しい。
 私たちは2019年から7年以上にわたり、岐阜県を中心として両生類・爬虫類の調査研究、保全活動、普及啓発活動を継続している。研究によって得られた知見を実際の保全活動へ還元するとともに、その成果を全国へ発信することで、生物多様性保全に貢献している。

1.親しむ活動
(1)高校生サイエンスフェスティバル【資料1参照】
・開催日:2025年2月2日、2026年2月1日
・会場:サイエンスワールド
・テーマ:「身近な両生類・爬虫類を観察しよう」
実物展示や触察体験を通じて、小中学生や保護者に両生類・爬虫類の魅力と保全の重要性を伝えた。2025年には905名が来場し、多くの来館者に生物多様性保全への関心を持ってもらう機会となった。
(2)白川郷学園クロサンショウウオ観察会【資料2参照】
・開催日:2026年6月17日
・会場:NEXCO中日本飛騨トンネル避難坑周辺ビオトープ
NEXCO中日本と連携して保全している岐阜県レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類クロサンショウウオを題材とし、白川郷学園3年生13名を対象に観察会を実施した。希少種保全を学ぶ環境教育の機会を創出し、地域の自然への理解を深めた。

2.理解する活動
(1)・2019~2020年度
テーマ:岐阜県大垣市に生息するマホロバサンショウウオの生活史の解明【資料3参照】
発見が困難で生態情報が少なかったマホロバサンショウウオについて、繁殖形態や流水への依存度など、生活史を解明し、保全活動の基礎となる重要な知見を蓄積した。
(2)2021年度
テーマ:大垣市に生息するマホロバサンショウウオの生活史の解明Ⅱ【資料4参照】
生息環境の分析をさらに進め、マホロバサンショウウオを取り巻く環境条件や地域生態系との関係を明らかにした。
(3)2022年度
テーマ:大垣市に生息する小型サンショウウオ2種及びカエル2種のハビタット特性【資料5参照】
マホロバサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、ナガレヒキガエル、カジカガエルを対象にハビタット特性を比較し、各種が異なる環境へ適応していることを明らかにした。
(4)2023年度
テーマ:生息適地モデルの作成と系統解析~岐阜県の渓流性サンショウウオ~【資料6参照】
生息適地モデルとDNA解析を組み合わせ、マホロバサンショウウオとヒダサンショウウオの分布形成過程を解明した。この研究は全国的に高く評価され、岐阜県児童生徒科学作品展最優秀賞、全国高等学校総合文化祭自然科学部門審査員特別賞、日本学生科学賞全国中央審査入選1等を受賞した。
(5)2024年度
テーマ:故郷『岐阜』のマホロバサンショウウオはどこからやって来たのか【資料7参照】
系統解析を発展させ、マホロバサンショウウオの分布拡大の歴史を解明した。高校生バイオサミットin鶴岡では優秀賞及び審査員特別賞を受賞し、高い学術的評価を受けた。
(6)2025年度
テーマ:画像解析を用いたハコネサンショウウオ属の幼生の種判別【資料8参照】
外見による識別が困難なハコネサンショウウオ属幼生について、AI画像解析を用いた種判別手法の開発に挑戦した。日本進化学会みんなのジュニア進化学敢闘賞、日本動物学会高校生ポスター発表賞を受賞するなど、先進的研究として評価された。
(7)2026年度
テーマ:岐阜県西部で確認された最も絶滅に近いクロサンショウウオの個体群について~系統解析・遺伝的多様性・保全~【資料9参照】
分布最南端に位置する個体群について系統解析と遺伝的多様性解析を実施し、保全上の重要性を明らか
にし、保全戦略の構築に必要な知見の集積を進めている。地域個体群の将来的な保全戦略に資する研究
である。

3.守る活動
(1)ヤマトサンショウウオの保護活動【資料10参照】
 2021年から継続して産卵環境の改善と幼生の保護飼育を実施している。死亡率の高い幼生期を保護し、変態・上陸直前に野外へ戻すことで生存率向上に寄与した。岐阜県レッドリスト絶滅危惧Ⅰ類に指定される本種の個体群維持・回復に大きく貢献している。
(2)クロサンショウウオの保護活動(NEXCO中日本と)【資料11参照】
 2019年から継続して、NEXCO中日本と協力し、乾燥化が進む繁殖地から、人工繁殖池やビオトープに卵・幼生を移植して整備を継続しているなか、移植地においても自然産卵が見られるようになっている。研究成果を実際の保全事業へ発展させ、絶滅が危惧される地域個体群の維持に貢献している。
(3)アズマヒキガエルの保護活動【資料12参照】
 岐阜市梅林公園において、コイによる卵・幼生の食害を防ぐためのネットを毎年設置している。その結果、多数の幼体が上陸できる状況を維持し、平野部で減少する個体群の保全に成果を上げている。
(4)ニホンアカガエルの保護活動【資料13参照】
 地域のボランティア団体(大洞の里山つくろう会)岐阜市自然環境課と連携し、濃尾平野では、ほとんど姿が見られなくなった本種の休耕田にある繁殖地が、乾燥化するのを防いて、生息環境改善を目指して、2024年から活動している。
(5)ニホンイシガメの保護活動(繁殖)【資料14参照】
 外来種ミシシッピーアカミミガメの駆除とニホンイシガメの人工繁殖を行い、繁殖個体の放流を実施している。在来種保全と外来種対策を両立した活動である。

4.広める活動
(1)研究成果の全国発信
 2019年度以降、日本爬虫両棲類学会、日本動物学会、日本生態学会、日本水産学会、日本進化学会、環境DNA学会などの全国規模の学術大会で継続して研究成果を発表している。
 研究成果は専門家から高い評価を受けるとともに、地域の希少生物保全の重要性を全国へ発信する役割を果たしている。
(2)主な受賞実績【資料15参照】
・日本水産学会春季大会 最優秀賞
・日本学生科学賞全国中央審査 入選1等
・高校生バイオサミットin鶴岡 優秀賞・審査員特別賞

活動紹介動画


成果・工夫した点

1.工夫したこと
 本活動では、単なる調査研究に終わらせず、「研究→保全→教育→発信」の循環を意識して活動を進めている。マホロバサンショウウオやクロサンショウウオなどの希少種を対象に、生態調査や系統解析、生息適地モデルの作成、AI画像解析などを、保全活動に役立てることを念頭に実施し、その成果の一部は、実際の保全活動へ反映している。また、観察会やイベントでは、研究成果を小中学生や地域住民にも分かりやすく伝えられるよう工夫し、地域の自然への関心向上にも努めている。

2.地域との連携
 本活動は学校のみで実施するのではなく、地域社会との連携を重視している。クロサンショウウオの保全ではNEXCO中日本と協力して保護池やビオトープの整備を継続しているほか、ニホンアカガエルの保全では地域のボランティア団体や岐阜市自然環境課と連携して生息地の環境改善を進めている。また、高校生サイエンスフェスティバルや白川郷学園での観察会を通じて、地域の子どもたちや住民に対する環境教育も実施している。研究成果を地域の保全施策へ還元し、自治体や企業、研究者と協働して活動していることが大きな特徴である。

3.継続している点
 2019年から7年以上にわたり継続して活動を行っている。毎年研究テーマを発展させながら、調査研究と保全活動を継続してきた結果、マホロバサンショウウオの生活史解明や分布形成過程の解明など多くの成果を得ることができた。また、ヤマトサンショウウオの産卵環境整備や幼生保護、クロサンショウウオの保護池整備なども継続的に実施しており、長期的な視点で絶滅危惧種の保全に取り組んでいる。さらに、学会発表や全国規模の研究発表会への参加を継続し、日本学生科学賞全国中央審査入選1等をはじめとする多くの受賞につながっている。

4.今後期待されること
 これまで蓄積してきた研究成果をさらに保全活動へ活用し、岐阜県内の希少な両生類・爬虫類の生息環境保全を推進していきたい。特に、気候変動や開発の影響が大きいクロサンショウウオやヤマトサンショウウオなどの絶滅危惧種については、行政や企業との連携をさらに深めることで、より効果的な保全へつなげることが期待される。また、観察会やイベントを通じて次世代を担う子どもたちの環境意識を高めるとともに、地域の自然を守る人材育成にも貢献していきたい。研究成果の全国発信を継続することで、岐阜県の生物多様性保全の重要性を広く社会へ伝える役割も期待されている。

 さらに、本活動は希少な野生生物を守るだけでなく、その活動を担う人材の育成にもつながっている。生徒たちは、地域の自然環境に関する課題を自ら発見し、研究し、地域の方々や行政、企業と連携しながら解決に取り組む経験を積んでいる。こうした経験によって培われた主体性や協働する力は、卒業後も様々な分野で生かされると考えられる。本活動に参加した生徒たちが、将来それぞれの立場で活躍する際にも、環境保全、生物多様性の維持、ネイチャーポジティブといった視点を持ちながら意思決定や行動を行い、持続可能な社会の実現に貢献していくことが期待できる。


🏫学校情報

岐阜県立大垣北高等学校
〒503-0017
岐阜県大垣市中川町4-110-1